【国際】16世紀のヨーロッパで何が起きていたのか?上空で発生した謎の天体現象の記録
【国際】16世紀のヨーロッパで何が起きていたのか?上空で発生した謎の天体現象の記録
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16世紀のヨーロッパで、不可解な天文現象が相次いで記録された。
1554年、神聖ローマ帝国領だったフランス・ストラスブールでは、血のように赤い光線が太陽を裂き、騎馬隊が空で激突する光景が目撃された。
さらに1561年、同じくローマ帝国領だったドイツ・ニュルンベルクの空には無数の球体が現れ、1時間以上も飛び交いながら衝突を繰り返したという。
これらの事件は当時のローマが出版した新聞に木版画つきで報道され、「終末の兆し」や「神の警告」と恐れられた。
いったい、これらの現象は何だったのか?当時の資料をもとに、その謎を探る。
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謎の天空現象を次々に報じたローマ帝国の新聞
神聖ローマ帝国の新聞はあらゆる種類の不思議な現象を木版画つきで報道した。「太陽、月、星の異常、空から石や火が落ちてくる、虹、奇跡的な誕生、血の雨」等々。説明のつかない出来事があまりに頻繁に起こったため、wunderzeichen(ワンダーサイン:不思議な兆候)と言われた。
1550~1559年の間だけでも400以上の大判の新聞や小冊子が発行され、新聞や論文だけでなく、個人の日記や書簡などあらゆる文献にこうした不思議な出来事が記録された。
当時の多くの読者は、こうした報告記事や挿絵を目にするのは世界の終わりが近いことの兆しだと受けとった。
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終末思想と宗教改革が不安をあおった
終末思想は目新しいことではないが、宗教改革のこの時期にこの思想は新たな勢いを増した。
ロビン・ブルース・バーンズは、「1560年までには、異常なことへの聖職者の関心は強迫観念以外のなにものでもなくなった」と書いている。
聖書の新たな翻訳は、とくに黙示録を劇的な言葉で表し、一方でルターや彼の信奉者たちは信者たちに天を見て未来を占うよう促した。
私たちは、太陽が暗くなり、月や星が落ち、人々が苦しみ、すべての風や水が騒ぐのを見た
この4年間で、太陽、月、星、虹、奇怪な幻影など、天空でどれほど異常な兆候を見たことだろう?(ルター)
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民間の迷信とは違い、最後の審判の前触れとしての「不思議な兆候」信仰は終末論で満ち溢れていた。
ルターの神学を体系化したフィリップ・メランヒトン(1497~1560)は空に描かれたこうした光景を神からのメッセージとみなした。
こうした兆候を考慮しなくてもいいというなら、どうして空にこのような不思議な現象が現れるのだろう?
神の摂理がこうしたマークを空に刻んだのは、国家にとっての大変動を告げるためなのだ。それをきちんと観察しないとは不敬極まりない。
日食、合[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88_(%E5%A4%A9%E6%96%87)]、流星、彗星などは、大きな災厄と変化をもたらして人々の生活を脅かす。これが神のお告げでないのなら、いったいなんだというのだろう?(メランヒトン)
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なぜ人々は空の異変を信じたのか?
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予言の意味が込められた天体への関心は、麦角中毒(北ヨーロッパの多くで穀物に蔓延した真菌感染症)のせいで刺激されたと言う者もいる。
この作物を摂取すると、錯乱し、火の幻覚をみたり、宗教を妄信したりした。そうした人々にとって、空は天文学的な驚異で輝いて見え、神がかったものに感じられたという説だ。
だが当時は極めて冷静な当時の人にとっても、その時期空で起きた一連の天文現象は、そう解釈するのに十分な出来事だった。地平線を横切る血の筋のようなオーロラ、太陽の暈、幻日、光柱を頻繁に目にすれば、なにがしかの神秘性を感じずにはいられなかっただろう。
1556年の大彗星は、英国から中国にわたる広範囲で目撃され、人々に畏敬の念を抱かせた。
そして、それぞれの流れ星が宗教改革の物語をさらに展開させた。
この年の5月に発行されたニュルンベルクの新聞は、地震で被害を受けたコンスタンティノープルのアヤソフィアについてふれている。
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この災害が彗星の出現と共に起こったことに人々はとくに驚かなかった。
当時の記事には、イスラム教徒とキリスト教の区別もまるで無視して「ローマ帝国の反キリストだと決めつけられている教皇庁もまた、神の警告を受けるだろう」と書かれている。
ヴィクトリア朝時代に写真技術が出現すると幽霊と遭遇したという話が急増したのと同じように、メディアのテクノロジーもまた16世紀のこうした幻影を広めるのにひと役かった。
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天文と戦いを掛け合わせたコンテンツは当時人気だった
下の画像のほとんどは、タイトル、木版画、どんな不思議な出来事だったのかの説明つきの大判の新聞「アインブラットドリュック」から抜粋したものだ。
こうした出版物はすぐに作れて、広く配布することができ、安価に購入することができた。ニュースや時事問題はかつてないほどのスピードで印刷され広まった。
そのため、ジャンルは急速に進化し、混合していった。1520年代始めには、生々しい戦絵巻がとくに人気を博した。
また、天文歴は神聖ローマ帝国でもっとも広く売れた俗語テキストの一部だった。
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星と星の間の戦いが空に現れ始め、これらふたつの異なるジャンルが融合したのは、意外なことだろうか?
歴史家のアビー・ヴァールブルク氏は、宗教改革のまっただ中で、一見、新しい形である異教がなぜ栄えたのかと不思議に思ったが、次のように結論づけた。
「天体の神々は、アウグスブルク、ニュルンベルク、ライプツィッヒの新しい印刷所のおかげで、言葉と挿絵で遍歴するルネサンスを享受したのだ」
17世紀には、天体現象の観察は徐々に減少していった。天が予言した破滅が30年戦争という形でついに地上に到来したのだ。
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References: Signs and Wonders: Celestial Phenomena in 16th-Century Germany — The Public Domain Review[https://publicdomainreview.org/collection/celestial-phenomena-16th-century-germany/]
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