【社会】上場企業を売却して得た20億円を“わずか2年で失った”ギャンブル中毒。「一度きりの人生、リスクを取って行動を起こしてみろ」
【社会】上場企業を売却して得た20億円を“わずか2年で失った”ギャンブル中毒。「一度きりの人生、リスクを取って行動を起こしてみろ」
上場企業の経営者から“日本一のギャンブル中毒者”へ──。18歳で光通信にアルバイト入社後、圧倒的な営業成績を誇り、26歳でラストワンマイル社を設立した清水望さん。2021年には同社を上場させ、翌年にはTOBで約20億円を手にした。しかし、彼はその資金の大半をカジノなどで熔かし、今ではほぼ使い果たしたという。
現在は、日本人トップクラスのポーカープレイヤーとして活躍し、2023年には世界的な大会WSOPで3位に入賞。さらに、YouTubeチャンネル「ラスワンのギャンブル魂〜ぎゃんたま〜」を運営し、自身の破天荒なギャンブル人生を発信している。
彼の波乱万丈な経歴から、成功と失敗のリアル、そして未来への展望について深掘りする。
◆◆上場企業を売却し、売却益20億円を獲得
「とにかく、イっちゃってる」。まさにそんな言葉がピッタリなのが、“ラスワン”こと清水望さん。自他ともに認める「日本一のギャンブル中毒者」で、YouTubeチャンネル「ラスワンのギャンブル魂〜ぎゃんたま〜」の配信者だ。
実はこの漢、2021年には自らが経営するラストワンマイルという会社を株式市場に上場させた実績を持つ。ラストワンマイル社は、自社運営コールセンターによる各種サービスの販売や、新生活における各種サービスの契約手続き代行など、BtoBからBtoCまで幅広いサービスを提供している会社だ。
だが、上場からわずか半年で、清水さんが持つ株式を約20億円で買い取ってもらう(TOB;株式公開買い付け)ことで株を売却し、清水さんはラストワンマイル社の経営を離れることになった。
「上場させたラストワンマイル社を時価総額1000億円企業に成長させようと考えていた矢先、目をつけたのが日本でも成長著しいポーカー市場でした。ただ、ポーカーはギャンブルの一種という認識が強く、上場企業としては扱いづらい業容です。
それならばと、イチからやり直す覚悟で会社を売却したんです。もっとも、上場企業の経営に携わっていては、世界中で行われるポーカーの大会には出場できないという理由もありました」
◆◆ポーカーは獲得賞金の日本人ランキングで7位の実力者
ここから清水さんの波乱万丈のギャンブル人生が始まる。日本でポーカーといえばトランプを5枚配られて、その5枚で役を作るルールが一般的に知られているが、世界のカジノでは手元には2枚配られる「テキサスホールデム」というポーカーが主流だ。
プレイヤーごとに2枚のカードが配られ、場には3~5枚の共有札(コミュニティ・カード)が開かれる。この計7枚を組み合わせて5枚で役を作り、役の強いプレイヤーが勝ちとなるルールだ。
場には3~5枚が開かれるため、「この人はどんな2枚のカードを持っているだろうか?」という心理戦と戦略性が重要になる、非常に戦略的なゲームとして人気だ。
清水さんのポーカーの実力はかなりのもので、ポーカー獲得賞金の日本人ランキングでは7位にランクイン(2025年現在)。2023年5月に米国ラスベガスで開催された世界最大規模のポーカートーナメントであるWSOP(World Series of Poker)では3位に入賞し、約4000万円を獲得するなど、これまでに3億円以上の賞金をポーカーで稼いでいる。
ところが、2022年のTOBで得た約20億円とあわせて、それらのお金は今ではすでに底をついているという。
「ポーカーでの生涯収支はエントリーフィーを考えるとトータルで1億円超のプラスですが、それ以外がまるでダメ。ざっと計算して、競馬で4億円、競艇で1億円、バカラやブラックジャックなどカジノで4億円、株や先物投資で7億円ヤラれています。そのほかに遊興費などを含めて4億円くらい使った。今ではほぼ使い果たしました」
清水さんのYouTubeチャンネル「ラスワンのギャンブル魂〜ぎゃんたま〜」を見ていると、清水さんの異常なまでの「ギャン中」(ギャンブル中毒)ぶりが描かれている。
海外にいながら、携帯では日本の競馬や競艇に大金をつぎ込む。ポーカーの大会の合間には、バカラやブラックジャックといったカジノゲームで、見事なまでに資金を溶かしていく……といったありさまだ。
ちなみに、ポーカーとは異なり、バカラは単純な丁半バクチのようなもので、テクニックなどは一切介在しない運任せのギャンブルだ。
「負けるのはわかっていますが、数あるギャンブルの中でも最も面白いのがバカラ。カードが配られた時点ですでに結果は決まっているのですが、僕は裏返されたトランプは常に白紙だと思っています。そこから念を込めて欲しい数字を印刷していくんです(笑)。
バカラを知らない人からしたら『何やってるんだ』と言われるでしょうが、バカラプレーヤーにとってはこの瞬間がたまらない。嫁には、『バカラをやったら離婚』とまで言われていますが、まあ、やめられないでしょうね」
その後、清水さんはX上で、バカラを引退宣言。2月26日から行われる世界最高峰のハイローラーポーカー大会「Triton Poker(トリトンポーカー)」への出場に向けて準備中だ。
通常、人はギャンブルなどで負けると、多少なりとも不機嫌になったり嫌な顔をしたりするものだが、清水さんは常に笑顔を絶やさない。頭の中では何を考えているかわからないが、それがこの漢の魅力であり、人を惹きつけるテクニックのひとつにも思える。
◆◆トップ営業を続けた光通信のサラリーマン時代
幼少時代にどのような時間を過ごせば、こんな豪傑ができあがるのだろうか。清水さんはマレーシアで生まれ、東京・板橋で育った。 子供の頃のバイブルは、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。波乱万丈の主人公「両津勘吉巡査長」に影響を受けたという。
18歳でアルバイトとして光通信に入社。過酷な営業で有名な光通信でトップ営業を続け、毎月100万円近い給料を得ていた。
「もらった100万円は、常に1か月で使い切っていました。半分は部下におごり、残りは競馬や競艇などのギャンブルで失っていました。
その後、光通信での経験を活かして26歳でラストワンマイル社を設立することになります。営業代理店という業容では株式市場への上場は難しいことがわかりましたが、上場すれば大金をゲットできる。そう考えて、上場に向けてさまざまな施策を講じました。僕にとっては、これも大きなギャンブルでしたね」
その後、保有するラストワンマイル社の株式を売却した清水さん。ところが、ギャンブルカジノで負けが込み、資金が底をつきそうなのは前述したとおりだ。
「ギャンブル資金が枯渇して、子供の貯金箱を壊したこともあります。最低の父親ですが、僕にとってギャンブルは仕事をがんばるためのツールでもあるんです。20億円あった資金もそろそろ底をつくころ。2025年は、仕事をがんばるフェーズとなりそうです(笑)」
◆◆「一度きりの人生、リスクをとって行動を起こしてみろ!」
現在、清水さんはアミューズメントカジノの店舗運営などを含め、いくつかの会社を運営している。直近では、日本人ポーカープレイヤーの海外遠征をサポートするDKジャパンの代表に就任した。そのほか、複数の企業と月10万円で顧問契約を結び、コンサルティングを行っている。
「『令和の虎』で有名な林尚弘さんとYouTubeでコラボした際に、顧問制度を勧められました。月10万円をいただき、ビジネスのお手伝いやアイデア出し、人脈の紹介などを行っています。顧問制度の募集を開始したところ、あっという間に定員の10名に達しましたので、さらに10名募集をかけているところです。会社を上場させた経験もありますので、お役に立てることはたくさんあるはずです」
インタビューにおもしろおかしく答えてくれる清水さんだが、彼が言いたいことは、「とにかく前向きに何かに取り組む姿勢が大切である」ということだろう。
「若い世代に言いたいのは『ギャンブルをやれ』ということではなく、『何かリスクを取って人生を勝負してみろ』ということです。仮にそれが失敗に終わっても、後々、大きな経験として生きてくるはず。一度きりの人生なので、中途半端に生きるのではなく、行動を起こしてみろと言いたいですね」
【プロフィール】清水 望
1985年生まれ、東京都出身。18歳で光通信のアルバイトで入社。入社2か月目で3000人のコールセンタースタッフのNo.1になる。20歳の時には300人の部下を持ち、26歳で早くも独立し、現在のラストワンマイル社を設立、代表取締役社長に就任。2021年に東証マザーズ上場。2022年にTOBで約20億円を得るが、わずか2年でカジノなどでほぼ熔かした。
YouTubeチャンネル「ラスワンのギャンブル魂〜ぎゃんたま〜」
<取材・文/三枝祐介 撮影/星 亘>
![](https://livedoor.blogimg.jp/hayabusa1476-3w61qc1e/imgs/6/6/66274ceb.jpg)