【国際】「そんなもの要らない」金正恩氏のビッグプロジェクトに市民が反発

【国際】「そんなもの要らない」金正恩氏のビッグプロジェクトに市民が反発

金正恩氏の取り組みが国民から支持を受けず、苦しい反発を招いているという事実は、政権の政策に対する不満が高まっている証拠です。

北朝鮮金正恩総書記は昨年12月、平安北道(ピョンアンブクト)の水害被災地に建てられた復興住宅の竣工式に出席した。金正恩氏は演説で次のように述べた。以下、一部の朝鮮中央通信の記事から抜粋する。

「ここ数年間に東海地区の仲坪と連浦、そして首都平壌に大規模の近代的な温室農場を建設し、温室野菜生産の経済的効率を検証しましたが、やがてここにも温室の海が広がると人民の生活向上でより大きな歩みを踏み出すようになるでしょう。

われわれはこの温室総合農場の建設を人民軍部隊と白頭山英雄青年突撃隊に分担し、激しい競争熱の中でわれわれの創造力が再び誇示されるようにしようと思っています」

この「鶴の一声」が地元に面倒を引き起こしている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

北朝鮮は、今年4月から、コロナ前のレベルまで国境を開放することにし、その露払いとして、非社会主義・反社会主義の掃討のための「100日戦闘」を年明けから始めた。

社会主義・反社会主義とは、当局が考えるところの社会主義にそぐわない行為、反する行為を指すが、担当者の匙加減次第で、何でもかんでも取り締まりの対象にできてしまう。

取り締まり班の82連合指揮部は、市内の通りに担当者を立たせて、通行人を無差別に呼び止めて、公務の執行中であるかどうかを確認する。そして私用で通りかかった人、商売を行っている人、中でも露天商、さらに服装が乱れている者を次々に摘発する。

そして、昼間から油を売っているのは非社会主義行為だとして、なんと金正恩氏が建設を提唱した温室農場の建設現場に送り込み、強制労働をさせるのだという。作業は、土を掘って、小石を取り除くというものだ。

このような「強制連行」「奴隷狩り」にも等しい行為は以前も行われていたが、よりターゲットが広がったようだ。それだけ人手が足りていないということだろう。

「国境都市である新義州を、国の発展した様子と威光を見せつける都市にせよという、(朝鮮労働)党の意図が反映された措置」(情報筋)

要するに、金正恩氏が見栄を張るために、ただ通りかかっただけの人を片っ端から捕まえて、強制労働させているということだ。

専業主婦が連れてこられる場合も非常に多いとのことだ。北朝鮮で専業主婦と言えば、本当に家で家事労働だけに従事している女性ではなく、実際は市場で商売を営んでいる人たちだ。当局が商行為を「まともな職業」として認めないことから、このようなひどい行為のターゲットにされてしまっているのだ。

朝鮮中央通信は1月29日新義州市と義州(ウィジュ)郡の女性同盟(朝鮮社会主義女性同盟)のメンバーが、都市経営事務所、円林施設事業所、上下水道事業所で働くことを志願したと報じているが、これは、建設現場での強制労働を避けるための手法である可能性が考えられる。

また、平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)から新義州まで、密造酒を運搬したとして1月15日に82連合指揮部に摘発された人は、温室農場の建設現場に連れて行かれ、3日もの間、地ならし作業に従事させられたとのことだ。

さて、新義州市民の反応だが、建設には一様に否定的だ。

「新義州の人びとは、温室のような施設の建設を望んでいない。今年も国があちこちで建設を繰り広げ、しばしば勤労動員され、やれ資材費だ、労働者の支援費だといってカネを巻き上げられる(税金外の負担)のではないかと心配している」(情報筋)

北朝鮮の都市部では、自宅の庭を畑にして野菜を栽培し、市場で販売している人が多くいる。野菜の供給は充分だとは言えなくとも、それなりにあるのだ。温室農場で野菜を供給することになれば、「民業圧迫」になることは目に見えている。つまり、野菜が売れなくなり、一般住民の収入が減るのだ。

あるいは温室農場での経費がかかりすぎて、野菜の値段が高く設定され、消費者からそっぽを向かれる可能性もある。

金正恩氏は余計なことをせずに、皆が自由に商売できる環境の整備に注力すべきだろう。また、鉄道や道路網の修復、発電インフラの整備、福祉の再構築などを行うべきだ。そうるすることで、国民の支持を取り戻せるのではないだろうか。

金正恩氏がジュエ氏と江東温室の竣工および操業式に出席した(2024年3月16日付朝鮮中央通信)

(出典 news.nicovideo.jp)

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