【社会】95カ国で「夫婦別姓」が法制度化、「世界の潮流に日本だけ取り残されている」夫婦別姓訴訟弁護団が調査
【社会】95カ国で「夫婦別姓」が法制度化、「世界の潮流に日本だけ取り残されている」夫婦別姓訴訟弁護団が調査
夫婦別姓を認めていない民法の規定は違憲だとして、国を相手取り訴えている裁判の原告側弁護団は2月21日、東京・霞が関の厚労省で会見し、裁判に提出した新たな証拠として、海外の夫婦別姓に関する法制度の事例調査を公表した。
それによると、弁護団が確認できた95カ国のすべてで、夫婦別姓が可能だった。95カ国のうち、夫婦同姓を選べず、別姓を基本とする国は中国やフランスなど33カ国にもなった。
また、別の証拠として提出されたのは、大阪大学大学院の三浦麻子教授による調査で、婚姻時にどちらの氏を選択するか話し合わなかった夫婦は、調査対象のうち4分の3にも及んだことが明らかになったという。
弁護団は「世界で日本は夫婦別姓が選べない国として取り残されています」と指摘し、選択的夫婦別姓制度の早期実現をうったえた。
●「婚姻前の氏の保持は、世界共通の流れ」
弁護団では、アジアや北米、中南米、欧州、アフリカの法制度を調査し、その結果95カ国で「夫婦別姓」が法制度化されていたことがわかったという。
特に中国や台湾、韓国、北朝鮮などのアジア各国では、原則的に「夫婦別姓」で同姓を選べない法制度となっている。このほか、フランスやスペイン、ギリシャなども同様だった。
こうした世界の状況について、弁護団の橘高真佐美弁護士は、次のように説明した。
「かつて、多くの国が婚姻の際に妻が氏を変えるという制度をとっていました。しかし、夫婦同姓を強制することは、女性差別にあたり、自己決定権が認められるべきだという認識が広がり、制度が変わってきました。
各国の制度のあり方は多様ではありますが、婚姻しても婚姻前の氏を保持することを認めるという方向性は、世界共通の流れになっています」
夫婦別姓を制度化した国の中には、国連による女性差別撤廃条約に批准している国もあるという。日本もこの条約に批准しており、これまで国連から選択的別姓制度を導入するよう4回にわたり勧告を受けている。
会見には夫婦別姓制度について研究をしているフランス国立東亜研究所の研究員、ルグリ・ジェラールさんも同席した。
日本では選択的夫婦別姓に反対する声の中に、「家族としての一体感が失われる」というものがあるが、フランスではどのような状況なのかを語った。
フランスでは「夫婦別姓」が基本であり、両親の姓が異なることから、子どもの姓をどうするかという議論があったが、現在では両親が話し合いで決定したり、決まらない場合はアルファベット順で決定したりしているという。
「フランスでは現在、いろいろな家族が増えています。夫婦別姓が基本であり、親が離婚して再婚しても、子どもの氏は生まれた時に選んだものなので、兄弟同士でも違う氏であることもあります。
フランスでもこの制度が子どもの幸福につながるのか議論がありました。しかし、現在では子どもの幸福は家族同士の愛情関係にあり、別姓は影響していないことがわかってきました」(ルグリさん)
●「話し合ったかどうか覚えていない」男性たち
現在、婚姻時に夫婦はどちらかの氏を選べるとされているが、95%の女性が夫の氏に変更しているという現状がある。この背景には女性差別があると弁護団は指摘してきた。
会見では、三浦教授による夫婦の氏を選ぶ際の話し合いについての調査結果も紹介された。
調査は昨年10月にウェブで実施し、20代から70代の728人(男性376人、女性352人)の回答を分析した。その結果、男性の回答で「話し合わなかった」「氏を変更しなかった」とする人は279人に及んだ。「話し合ったかどうか覚えてない」「氏を変更しなかった」人も22人いたという。
婚姻時の氏をどう選択したかについての調査は、弁護団でも初めて確認したといい、「話し合いの結果、妻が氏を変更していると言われてきましたが、実態として多くのケースで話し合いがされていなかったことがわかりました」としている。
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