【国際】金正恩、ロシア軍事支援の対価は「2.8兆円」か
【国際】金正恩、ロシア軍事支援の対価は「2.8兆円」か
北朝鮮は昨年11月から、約1万1000人の兵力をロシアに派兵している。その多くがウクライナ侵攻の最前線であるクルスクに送られ、韓国・国防省の推計によると、300人が戦死し、2700人が負傷したものと見られる。北朝鮮が血の代償として得たものは非常に大きかった。
韓国政府系の国防研究院(KIDA)は7日、「ロシアと北朝鮮の軍事協力の経済的波及効果と対応方案」というタイトルの報告書を発表した。それによると、派兵により北朝鮮が得る経済効果は約28兆7000億ウォン(約2兆8650億円)に達すると見られるという。
その内訳を見ると、弾薬などの物資供給が27兆4000億ウォン(約2兆7350億円)で圧倒的に多く、技術支援が9000億ウォン(約898億円)で、派兵など人的支援によるものは4000億ウォン(約399億円)に過ぎなかった。
ロシアは派遣された北朝鮮兵士に毎月2000ドル(約29万3000円)の給与と一時金を支払っていると言われ、1万1000人が1年間給与を受け取ると4000億ウォンに達する。
3兆円近い利益は、北朝鮮で毎年不足する食糧の33年分を購入できる金額だ。ところが、北朝鮮はそうはせずに、兵器開発に注ぎ込むと見られる。ミサイル一発には414億ウォン(約41億3000万円)が必要になる。
北朝鮮がロシアから手に入れたいのは、兵器と技術支援だ。例えば、今後ロシアから原子力潜水艦など戦略兵器の開発技術を導入したり、戦闘機などの兵器を確保したりする可能性もある。
第4世代以上の戦闘機を要求する可能性もある。北朝鮮は保有している戦闘機が老朽する一方だが、韓国は第5世代のF-35A戦闘機を導入し、空軍戦力の格差が広がりつつある。ロシアも中国も、北朝鮮からの新型戦闘機の要求を断り続けてきたが、ウクライナ侵攻をきっかけにロシアが立場を変えることも考えられる。
また、すでに技術移転が行われている分野も存在する。北朝鮮は先月、新しいAI技術が導入された自爆型ドローン、空中早期警戒制御機、新型無人偵察機などを公開した。北朝鮮が既存に保有していたものより明らかに改善されている。
このような北朝鮮の軍事力強化は、金正恩政権の維持、強化に繋がる。
執筆者のパク・ヨンハン先任研究員は報告書で、「ロシアと北朝鮮の軍事協力は、有事の際にロシアの朝鮮半島介入の可能性を高め、朝鮮半島の不安定な状況でも金正恩政権の維持を支援することができる」「ロシアと北朝鮮の軍事協力を遮断する措置が急務だ」と指摘した。
これは、ロシアのウクライナ侵攻を終結に誘導したり、協力深化を抑制するための国防、外交的な努力が必要ということだ。
また、「ロシアが北朝鮮に提供する代償に、戦略兵器開発支援や最新型兵器の譲渡が含まれないように、対北朝鮮制裁の実効性を強化する策を講じると同時に、韓国とロシアの協力を推進し、遮断する方法も検討すべき」とも述べた。
一方で、別の意味の「代償」も大きい。
北朝鮮は頑なに隠そうとしている派兵の事実だが、戦死者の遺族や海外情報に接することのできる人を通じて国内に流入し、「祖国防衛のための朝鮮人民軍が、他国のために戦っている」とことが知れ渡っている。これは軍や金正恩氏に対する不信感に繋がっており、体制を揺るがす要素の一つとして作用する可能性も考えられる。
だからこそ、北朝鮮当局は情報流入をブロックしようと躍起になっているのだ。
