【社会】魚離れ深刻「週1以下」が47%…元水産庁職員が伝授「安く簡単に調理できる今買って間違いない魚の名前」

【社会】魚離れ深刻「週1以下」が47%…元水産庁職員が伝授「安く簡単に調理できる今買って間違いない魚の名前」

元水産庁職員である著者が推奨する、安く簡単に調理できる魚の紹介は非常に有益です。手軽に手に入る魚を選ぶことで、魚料理を日常に取り入れるきっかけになりそうです。忙しい現代人にとって、時短で栄養価の高い食材を使えるというのは大きな魅力ですね。

魚離れが加速している。食卓に魚を取り戻すにはどうすればいいか。元水産庁職員の上田勝彦さんは「魚は丸ごとさばいて食べるのがいい。この時期はイワシがお勧めだが、1尾2尾とチマチマ買ってはいけない。10尾単位で買って一気にさばくのが経済的だ」という。ライターの大宮冬洋さんが実践した――。

■週に1回以下が47%…魚離れの実態

あなたは魚を料理しているだろうか。塩焼きすらハードルが高く、たまに刺身をパックで買ってきて食べるぐらい、という状況かもしれない。オレンジページの2022年調査によると、魚料理を作る頻度が「週1日以下」と答えた人が47.1%にのぼった(調査対象は国内在住の成人女性1203人)。

一方で、「今よりもっと魚を食べたい、家族にもっと魚を食べさせたいと思いますか?」と答えた人が69.8%もいる。多くの人が魚を食べたいと思いつつも魚を買って料理することからは遠ざかっているのだ。

理由はすぐに思い浮かぶ。「魚は肉よりも高くつきやすい」「魚料理は難しいし、片付けが面倒くさい」「家族に喜ばれる魚料理がわからない」などだろう。ならば、美味しい魚料理をお得かつ簡単に作れるようになればいい。楽しくなってくれば準備や片付けが面倒だとは思わなくなる。もはや趣味になる。キーワードは、丸魚、すなわち一匹丸ごとの魚をさばいて食べることだ。

■丸魚をさばいて食べることは一石何鳥なのか数え切れない

筆者はコロナ禍で出張ができない日々が続いたときにこの趣味を見つけた。愛知県の海沿いに住んでいるので漁師や仲買人とも知り合えて、新鮮な魚を安く買えることに気づいたのだ。

魚を多めに買って自宅でさばいて、少し手数料をのせて魚介類好きのご近所さんにも分けると、我が家の魚代はたいていゼロ円に。下手な刺身でも、妻は嬉しそうに食べてくれる。魚という食材の知識と技術は自然と高まるので、寿司などの外食をより深く味わえるのも良い。プロの仕事はやっぱりすごい! と感動できている自分が誇らしく思えたりする。美味しくてお得で、健康にも地球環境にも良くて、家族や友人にも喜ばれる――。丸魚をさばくことは一石何鳥にもなるのだ。

■丸魚はパックより2割安く、しかも鮮度が保たれている

漁師や仲買人とつながっていなくても、近所のスーパーで丸魚を売っていればこの趣味は可能。旬の魚であれば値段も手ごろなのでまとめ買いすればいい。ご近所に転売しなくても構わない。自宅消費だけでも十分にお得だ。

「どんな魚でも包丁を入れて加工されたものは丸魚と比べて値段は2割増しぐらいになる。加工賃だ。一方で、魚は刃が入った分だけ劣化していく。空気、水、雑菌に触れるからだね」

パックで売られているサクや刺身などより丸魚のほうが値段も安くて鮮度もいい理由を親しみやすい口調で教えてくれるのは、元水産庁職員で「魚の伝道師」の異名を持つ上田勝彦さん。現在は神奈川県鎌倉市にある鮮魚店「サカナマルカマ(以下、マルカマ)」にアドバイザーとして入り、魚の仕入れから処理、接客に至るまでを指導している。

上田さんによれば、天然の魚には「味覚の旬」と「漁獲の旬」がある。その魚が一番美味しいとされる時期と、産卵接岸などで大量に獲れる時期は分けて考えるべきなのだ。例えば、サワラ(鰆)の「漁獲の旬」は産卵期である文字通り春だが、脂も乗って肉の味に奥行きが増す「味覚の旬」は秋から冬にかけてで、“寒サワラ”とも呼ばれる。

「だから、狙うべきは味覚の旬と漁獲の旬が重なり合った魚だね。今日のマルカマでお勧めの魚? イワシが旨いよ」

当然、店によって仕入れは異なる。鮮魚店や鮮魚コーナーのスタッフをつかまえて聞いてみるのが手っ取り早い。

■マイワシは過去10年平均の2倍以上獲れている

6、7月の梅雨の時期に水揚げされるマイワシ(以下、イワシ)は「入梅イワシ」と呼ばれ、1年で最も脂がのって美味しいと言われる。ただし、脂が多い=美味しいとするかどうかは人それぞれ。48歳の筆者は脂たっぷりよりもさっぱりとして旨味のある魚のほうが好きだ。上田さんも「魚は変化を楽しむもの」だと言い添える。

イワシは早ければ1月頃に出回り、4月には北海道産などはかなり太っている。初夏の産卵を終えると痩せるけれど、脂がないだけで旨味はある。団子汁や塩イワシにすれば十分に旨い。イワシは鮮度が良くて安ければ買い、だね」

1990年代2000年代はほとんど獲れなかったイワシ。現在は一転して豊漁期にあり、例えば富山県では大量に水揚げされている。富山県の水産研究所によれば、今年2月の漁獲量は4000トン弱。過去10年平均値の約2.6倍の量である。富山産や氷見産と書かれた新鮮なイワシを見つけたら即買いで間違いない。

そして、「イワシは一尾二尾とちまちま買うものじゃない」と上田さん。小魚は10尾ぐらいまとめてさばくほうが経済的かつ効率的なのだ。

「余ったら塩イワシにすれば保存もきく。塩イワシを焼くか茹でるかして、ふかしたサツマイモと一緒に食べてみてちょうだい。塩気と旨味に甘味が絶妙に合う。戦後の日本を支えた味だよ」

■頭や骨は捨てずに美味しく活用する

団子汁に塩イワシ。上田さんの口から旨そうな料理名が出た。新鮮で脂ものっているので2尾ぐらいは刺身で食べたいけど、残りは団子汁(つみれ汁)と塩イワシにしてみよう。刺身用にさばいて取り除いた頭と骨も使える、いいダシが出るので捨てるのはもったいない、と上田さん。

「頭はキッチンバサミで割ってエラをむしり取る。ボウルの中で水をかけ流しにして、血で濁らなくなったら血抜き終わり。鍋の水に入れて沸騰したらアクをすくい取って弱火にする。頭からは濃厚なダシ、骨からはスッキリしたダシがとれるよ」

魚は生のままでごみにすると臭くなってしまうが、こうして料理に使って加熱しておくと臭いはかなり抑えられる。エラや内臓はさすがに使えないが、新聞紙で包めば水分と臭いを吸ってくれる。それを小さくまとめてビニール袋に入れて口を固く結んで捨てよう。

■イワシ団子は汁の中で割ってすすると濃厚なダシを楽しめる

イワシのさばき方(手開き)や団子汁のレシピは検索すればいくらでも出てくる。ここでは上田さん流レシピを簡単に記しておく。

(1)ネギを白い部分と青い部分に分け、白い部分はみじん切りに、青い部分はみじん切りか斜めに細く切っておく。大葉は縦4つに割って千切り。イワシの匂いが気になる人はしょうがのみじん切りを用意してもいい。

(2)手開きしたイワシもみじん切りにし、ネギの白い部分と大葉、しょうがなど薬味と共にボウルに入れ、塩少々を加え、味見して澄まし汁くらいの味にととのえる。塩がきつすぎないように注意。片栗粉をまとまる程度に混ぜ合わせ、ヘラで空気を抜きながらよく練り、手をぬらして直径5センチぐらいの大きな団子に作る。

(3)頭と骨でとったダシの中に団子を入れ、弱火で加熱する。沸騰させると団子の味が抜けてしまうので注意。

(4)団子が浮いてきたら中まで火が熱が通ったサイン。薄口醤油で味をととのえ、5センチ角の昆布を入れて柔らかくなったら取り出す。「昆布はすべての味の平均点を上げてくれる」(上田さん)。

(5)椀に盛り、ネギの青い部分を散らして完成。

実際に作ってみると、直径5センチのイワシ団子は迫力のある見た目と食べ応えで、汁椀に1個でも十分に満足できる。汁をすすると、ダシの旨味をしみじみと味わえる。捨てられがちな頭と骨を有効活用できたと思うと余計に嬉しい。

「汁を少しすすったら、団子を割ってみな。味変を楽しめるよ」

上田さんの教えを思い出してやってみた。おおっ、確かにまったく違う汁に変化する。大葉の香りがふわっと広がり、イワシの青臭さを包み込んでくれる。飲むほどにイワシのダシが濃くなっていく。これは面白い。3尾分ぐらいはまとめて作り、翌朝も楽しみたい。

■万能保存食「塩イワシ」の作り方

イワシを10尾買ったとすると残りは5尾。新鮮なまま焼いても煮てもいいけれど、食べ飽きた場合は上田さん流の塩イワシにしよう。イワシは傷みやすいので魚偏に弱いで「鰯」と書くけれど、塩イワシにしておけば4、5日は冷蔵保存可能、ラップに包んで冷凍なら1カ月はOKだ。作り方は以下の通り。

(1)頭と内臓を取って洗ったイワシをボウルに入れて、ひとつかみの塩を入れてゆすってまぶす。

(2)30分間ほど置くと、浸透圧の働きで水分が出て、触るとプリッと張っている。塩粒を洗い落とし、3分間ほど真水に浸して血抜きする。

(3)水気をよく拭き取り、保存容器にキッチンペーパーを敷き、腹を下にして置く。冷蔵庫で一晩寝かすことで塩が中心にまで入る。「塩イワシは作ってから3日目が一番旨い。それ以降は冷凍保存がおすすめ」(上田さん)

青魚は野菜と一緒に炒めても旨いよ、と上田さんが教えてくれた。塩イワシならば調味料を入れなくても美味しい魚野菜炒めになるだろう。

■イワシ10尾では足りなかった

筆者は塩イワシを茹でてみた。煮魚はときどき作っているけれど、「茹でる」のは初めて。これがめちゃ旨い! ただし、下手に煮ると塩イワシの味がお湯の中に流出してしまうので、上田さんの著書『ウエカツの目からウロコの魚料理』(東京書籍)を引用しておく。

「ゆでる」は、沸騰手前の温度(80~90℃)のお湯で加熱する。きちんと加熱はできているけれど、魚の肉の細胞内の水分は沸騰しないから、旨味が水中へ流れ出ることはない。つまり、旨みを外に出すことなく、肉の中に閉じ込めていることになる。

特に茹でたてをぜひ味わってみてほしい。骨から身が簡単に剥がれて、口の中でホロリと崩れていく。ほどよく塩味の効いたイワシの旨みは凝縮されていて、だけど茹でた際の水分もあってパサつかない。レンジで柔らかくしただけのサツマイモと合わせたけれど、これが絶妙。サツマイモの土臭さと甘味がイワシの青臭さと旨味と合体して、臭みを隠し合って良い匂いに昇華するのだ。

刺身で2尾、団子汁で3尾、塩イワシで5尾。2食ぐらいでなくなってしまう。夫婦では足りないぐらいだ。今後、新鮮なイワシが山盛りで売っていたら躊躇なく手に取ることにしよう。

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大宮 冬洋(おおみや・とうよう)
フリーライター
1976年埼玉県所沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。著書に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せの見つけ方~』(講談社+α新書)などがある。2012年より愛知県蒲郡市に在住。趣味は魚さばきとご近所付き合い。

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魚偏に弱いと書くイワシ。その名の通り傷みやすいので、このように保冷して売られているものを選びたい。鎌倉の鮮魚店「サカナヤマルカマ」にて。 – 筆者撮影

(出典 news.nicovideo.jp)

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