【読売新聞】在留資格ない子に教育を 大阪の市民団体が寄付呼びかけ
【読売新聞】在留資格ない子に教育を 大阪の市民団体が寄付呼びかけ
外国にルーツのある子どもたちを支援する市民団体「子どもの夢応援ネットワーク」(大阪市西区)は、日本で生まれ育ちながら親の不法滞在などを理由に在留資格がない子どもらへの給付型奨学金の支給を始めた。親が就労できず経済的に進学が難しいためで、支援を継続するための寄付を呼びかけている。(南部さやか)
強制送還の対象
夢応援は1月18日、大阪市内で奨学金の伝達式を行った。初めての対象は、いずれも日本で生まれ育ったペルー国籍の男子大学生(21)と、スリランカ国籍の府立高校2年の男子高校生(17)。学費支援として1人あたり年間12万円を支給する。
2人は親とともに強制送還の対象となり、一時的に入管の収容を解く「仮放免」の状態で暮らしてきた。親が就労できないため生活は困窮。国民健康保険に加入できず、大阪府外に出るにも入管の許可が必要だった。公立学校には通えるが学費を工面できず、支援者の寄付でなんとか進学した。
伝達式後の交流会で、男子大学生は「これまで多くの人に支えてもらった。学校の教師になる目標に向かって努力する」と力を込めた。男子高校生も車の整備士になるため、卒業後は進学したいと打ち明けた。
救済措置
日本で在留資格のない子どもの親は、母国の政情不安などを理由に日本に入国し、在留期限が過ぎて不法滞在となった後も、難民申請を繰り返すなどして日本にとどまり、結婚、出産するケースが多い。2人の家庭も同様だ。
法務省は2023年、人道上の配慮から、こうした子どもに「在留特別許可」を特例で出す救済措置を始めた。日本で生まれ育ち、小中高校に在学していることなどを考慮する。
出入国在留管理庁によると、不法滞在などで強制送還の対象となっても帰国を拒む外国人の中で、日本で生まれ育った子どもは昨年9月の発表で263人おり、このうち212人に在留特別許可が出された。2人も昨年、許可が下りて「留学」の在留資格を得た。
「留学」は入管に申請すれば週28時間まで資格外活動が認められる。2人はアルバイトを始めたが、それでも学費負担は大きい。夢応援は昨年から、日本での定住を希望し、進学や就職に向けて勉学に励む子どもたちを応援しようと基金の設立準備を進めてきた。
「恩返ししたい」
夢応援は、年100万円の基金の積み立てを目標にしている。支給対象は在留資格のない関西の高校生などを想定し、年齢は問わない。軌道に乗れば、外国にルーツがあり、経済的な理由で進学が難しい子どもにも対象を広げたい考えだ。
基金設立の賛同者には外国から来た人たちもいた。15歳で中国から来日した大阪の不動産会社経営、岩城文偉さん(36)は、「当時学校の先生に助けられたから今がある。恩返ししたい」との思いから、友人で旅行業を営む王長磊さん(35)とともに数十万円を寄付した。
夢応援の米谷修さん(66)は「どのような事情があっても子どもに罪はなく、教育を受ける権利がある。市民団体が率先し、日本の貴重な人材となる子どもたちに支援の手を差し伸べたい」と語り、協力を呼びかけている。
寄付は、ゆうちょ銀行の口座名義「タブンカキョウセイキョウイクオオサカ」(記号14080 番号71255161)まで。問い合わせは米谷さん(080・7011・6740)。
<在留特別許可> 出入国管理・難民認定法に基づき、日本に長年住むなどの一定の事情が認められる場合、法相の裁量で不法滞在などの外国人に「定住者」や「特定活動」などの在留資格を与え、国内滞在を認める措置。
https://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20250203-OYTNT50153/