【社会】そりゃ子供が増えないわけだ…給付金をバラまいてきっちり搾り取る日本を襲う「人口8000万人減」という未来

【社会】そりゃ子供が増えないわけだ…給付金をバラまいてきっちり搾り取る日本を襲う「人口8000万人減」という未来

日本の人口減少は深刻な問題です。給付金を配っても、子どもを持つ決断に繋がらない理由があるようです。子育て支援の充実や、働きやすい環境づくりといった根本的な変革が求められています。

日本人はなぜ、結婚も子供も望まなくなったのか。独身研究家の荒川和久さんは「『将来世代のために』と政府が国民負担率をあげるほど、出生数は減り将来世代が生まれないという皮肉な状況になっている」という――。

■「将来世代のため」の政策が今を蝕む皮肉

「将来世代の負担を増やさないために……」

これは、政治家がよく減税に反対する際に使う枕詞です。一見もっともらしく聞こえますが、この20年間の国民負担率の上昇を振り返ると、結果的には将来世代の負担を増やし続けてきただけのように思えます。

もちろん、ツケを先送りしないことは大事ですが、そもそも昭和の人口増加前提の社会で通用した話を、少子高齢化の人口構造と人口減少必至の令和にあてはめ続けること自体がもはや無理筋ではないでしょうか。

人口は確実に減少します。何をどうしようがそれは確定しています。

2100年に日本の人口は6000万人になる(正確には6278万人)」という報道などを見聞きした人もいるかもしれませんが、あれは国立社会保障・人口問題研究所(社人研)による中位推計によるものです。しかし、この中位推計の数字は過去も含めて的中したためしがありません。だからといって推計がいい加減であるというのではなく、出生数でいえば1997年の低位推計通り、2019年までのコロナ禍まで寸分違わず推計が的中しています。2024年の出生数も低位推計では69万人としており、ほぼ実態と合致しています。

■2100年の人口は大正時代とほぼ同じ5000万人

一方、死亡数は今まで中位推計通りに推移してきましたが、2022年以降は高位推計寄りに増えています。よって、今後の人口を考えるにあたっては、出生低位・死亡高位の推計に基づいてみるのが妥当です。それに基づけば、2100年の総人口は6000万人どころか4956万人となります。これは大正時代1915年の人口とほぼ一緒です。

人口減少というと、「少子化をなんとかしないと」という話が出ます。もちろん出生数が減ることも人口減少の一因であることは確かですし、昨今の急激な出生減には何らかの手立てが必要ではありますが、とはいえ、出生数が多少改善したところで何も変わりません。というのも、これから起きる人口減少は少子化によってではなく「多死化」によって生じるものだからです。

ここで、明治時代からの日本の出生数と死亡数および出生数から死亡数を引いた自然増減の推移を確認しておきましょう。前述した通り2025年以降は出生中位・死亡高位推計を使用します。

■今後50年で「8000万人が死亡する」衝撃の試算

グラフに示した通り、戦後、2度のベビーブームで出生数の増大があり、それがさらなる人口増に寄与したことは確かですが、それと同時に医療の発達や栄養面の充実などにより、乳幼児死亡率が大きく改善されました。生まれた子が乳幼児のうちに死ななくて済むようになった。これが死亡数の減少につながりました。加えて、医療の発達は高齢者の死亡も減少させ、「少死」期を作り、これが長寿国日本を作り上げることになったのです。

しかし、人間は不老不死ではありません。長寿化したといってもいつかは亡くなります。1990年代以降出生数が減少し続けるのと並行して、死亡数は増え続け、遂に2005年に死亡数が出生数を上回る自然減状態に突入し、今に至ります。これが「少産多死」時代の幕開けでした。これは日本に限らず、やがて世界のどの国でも同様の人口転換メカニズムとして表出します。

人口動態速報から確定値としての日本人死亡者数を類推すると、2024年の死亡数は160万人を突破します。年間160万人死亡というのは、統計の残らない太平洋戦争期間中を除けば、日本の有史以来最大の死亡数となります。

しかし、この年間死亡160万人が、今後少なくとも25年間継続します。また、160万人とはいわないまでも年間150万人以上の死亡が2071年まで約50年続くことになります。

2024年から2073年までの50年間の総死亡者数は約8000万人です。今の1億2000万人の人口のうち、約3分の2がいなくなってしまうのですから人口減少は必至です。

■「人口8000万人維持」という危険な幻想

つまり、今日本はまさに「少産多死社会化による人口減少」に突入しているのであり、この状態が少なくとも50年以上は続くという不可避な現実と向き合わなければならないのです。言い換えれば、「現状維持はできないという前提に立つ」必要があります。

2024年1月に人口戦略会議が「人口ビジョン2100」なるものを提唱しました。主旨は2100年に人口8000万人を維持するというものです。が、それを実現させるためには、2060年までに出生率2.07を達成しないといけないという実現不可能な計算です。できもしないことを堂々と言うのは勘弁してほしいものです。

よく危機として引き合いにだされるのが、老年人口指数で、これは15~64歳までの現役世代1人あたりでどれくらいの65歳以上の高齢者を支えないといけないかという話です。1960年には現役11.2人で高齢者1人を支えていたものが、今後は現役1人が高齢者1人を支えないといけない肩車型になると言われています。

しかし、これはあくまで年齢で機械的に区分けしたものに過ぎず、現役世代でも何らかの事情で働けない人もいるし、高齢世代でもバリバリ元気に働いている人もいます。

人口減少必至のこれからは、年齢ではなく「働ける人が働けない人を支える」という視点(就業人口依存指数)に切り替えていく必要があるでしょう。

■負担増で「働くだけ損」の風潮が蔓延する

この就業人口が非就業人口を支える指数でみると、2024年時点で1.6人の就業者が1人の非就業者を支えています。これは、1.4人以下だった2000~2005年の氷河期より増えています。女性や高齢者の就業率が増えたことによりますが、もっと以前の1968年は1.9人でした。ちなみに、65~69歳の男性就業率は2024年の63%より67%だった1968年のほうが高かったという事実もあります。そもそものポテンシャルはあるのです。

ところが、現状はどうでしょう。働く世代に対する負担ばかりが増え、むしろ「働くだけ損」という風潮すら広がっています。それもそのはずで、政治家は「将来世代のために現役世代の皆さんには等しく負担をいただく」などと言い続け、財務省が発表した2025年の国民負担率(税金と社会保険料が占める割合=編集部註)の見通しは46.2%です。ネット上では「五公五民」などと揶揄されてもいます。

国民負担率は1990年代と比較すれば40%近く増加しています。ただでさえ手取りがあがらない中で昨今の物価高により生活が苦しいと感じる人は増えているでしょう。将来世代の負担を云々する以前に、今の現役世代そのものがその負担の大きさに潰されようとしています。

■国民負担率が上がるほど婚姻・出生は減る

加えて、国民負担率があがればあがるほど、若者の結婚と出生も減ります。国民負担率が40%増加したことに連動して結婚や出生は40%減少しているわけです。将来世代のためにと国民負担率をあげることが、結局その将来世代を生み出さないことに絶大な効果を発揮しているというのはなんという皮肉でしょう。

国民負担率がこれほど急上昇した理由は、政府の「配るけどその分まきあげる」という体質にあります。旧民主党が「控除から給付へ」などと言い、年少扶養控除を廃してこども手当を給付した例が典型ですが、その後も幼保無償化、教育無償化などと一見子育て支援の体で給付しているようで、その分きっちり回収されています(〈だから日本の若者は結婚も子供も望まなくなった…子育て支援策は3倍に増えたのに出生数は30%も減った理由〉参照)

所詮、給付といってもそれは元々国民の税金によるものであり、「後で回収するなら最初から取るな」と言いたくもなるでしょう。

4月に入って、政府が物価高対策のために現金給付をするという話が出た際に、多くの国民が「給付なんていらない」と拒否反応を示し、「だったら減税して」と反応したのは、まさしく今までの政府の朝三暮四のやり方にうんざりしているからです。

■「今を生きる人」を大切にしない国に未来はない

いずれにしても、多死化による人口減少は止まらない。しかし、悲観的にとらえても何も解決しません。この多死人口減少は、ある意味では現状の歪な逆三角形型の人口ピラミッドが補正されていくことでもあります。逆三角形型が将来的に各年代とも均衡な長方形型に変われば、人口が増えも減りもしない静止人口に落ち着きます。ただし、その間の、特にこれからの50年間は耐え抜かないといけない時期になります。

だからこそ、今は現役世代の活力を喚起することが最優先になります。人口が減るから現役世代の負担を増やすなどという人頭税のような考え方ではどうにもなりません。むしろ現役人口が減るからこそ、一人一人の手取りを増やし、今まで以上に消費をして、経済をより活性化させていく必要があります。

そう考えれば、働く人が「働き損」などと感じるような国民負担増は悪手でしかなく、年齢にかかわらずそれぞれの働く人が働いた分経済的に報われ、不安なく活き活きと毎日を送れるよう手立てを講じてほしいものです。それが結果として若者の心の余裕を生み出し、結婚や出生の増加にも寄与する真の少子化対策となるでしょう。

人口が減り続けるこれからの50年はまさに大きな転換期です。「将来のために」などとキレイ事を言っても、まさに今が潰れてしまえば将来は永遠にやってこない。未来は今の連続でしかないのですから。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

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※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Free art director

(出典 news.nicovideo.jp)

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