【国際】どの人種より学歴も収入も高いのに…日本人が知らない「理不尽な東アジア人差別」の実態
【国際】どの人種より学歴も収入も高いのに…日本人が知らない「理不尽な東アジア人差別」の実態
※本稿は、谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない6』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
■やらせ満載の“茶番劇”が差別の舞台に
世田谷自然左翼系の出羽守(でわのかみ)の人々は、常日頃「海外先進国は差別がない」と言い張ってきましたが、彼らの“高貴な嘘”を暴露する事件が発生しました。
アメリカのアカデミー賞ではドン引きするようなアジア系差別事件が起きました。アカデミー賞は毎年全世界で放送されるアメリカ芸能界の“茶番劇”をありがたく拝聴するイベントで、そのやらせ加減は往年の日本レコード大賞も真っ青です。
「神様やスタッフに感謝いたします」と実に白々しいスピーチをする見せ物なので、一応“建前”が主体になっています。
近年は政治的な正しさ(ポリコレ)が主体であり、韓国映画の『パラサイト』や、アメリカの貧困層を描いた『ノマドランド』など政治的な作品が作品賞を受賞しているわけですが、「多様性」を貫くなら『大怪獣のあとしまつ』と『温泉シャーク』が作品賞を受賞するべきでしょう。
■ポリコレ全盛期だから評価された映画
さて事件は2024年の第96回アカデミー賞で発生しました。
前年に作品賞、監督賞、主演女優賞など7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァンと、主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーがプレゼンターとしてオスカー像を手渡したのです。
ところで、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はコインランドリーをやっている貧乏で冴えないアジア系夫婦が「異世界」(マルチバース)に巻き込まれて殴ったり蹴ったりして、レズビアンの娘や大人のおもちゃが登場するよくわからない作品で(正直つまらないため)私は途中で爆睡してしまいました。
爆睡したのは旧東ドイツを舞台にした作品『林檎の木』以来で、これはスキンヘッドのオッサンとシワシワの婆様が不倫するすごい作品です。
一応、ポリコレ全盛の時代なので、この実につまらない『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はアカデミー賞で絶賛され、主演のミシェル・ヨーは主演女優賞を獲得し、キー・ホイ・クァンは助演男優賞を受賞したのでした。
■白人から東洋系へのいじめに見え、大炎上
その翌年(つまり2024年)の授賞式で事件は起きました。
全世界に中継されるアカデミー賞でオスカーを手渡されたロバート・ダウニー・Jr.が、キー・ホイ・クァンの目すら見ず、ほかの受賞者であれば丁寧に挨拶するところを、ほぼ無視して通りすぎてしまったのです。
ロバート・ダウニー・Jr.は大金持ちでヤンチャなことで有名なので「貧民にどう思われるか」など気にしていないようです。昔からこの調子です。
主演女優のミシェル・ヨーからオスカーを手渡された有名女優エマ・ストーンも、ヨーを無視して自身がふだんから仲良くしている女優の方にさっさと行ってしまいました。その女優とは大喜びしてハグまでしています。まるで白人だらけの学校で、女子たちが東洋系の生徒にやるようないじめに見えました。
全世界に中継されるイベントでこのように白人のアメリカ人が東洋系の俳優たちを堂々と無視し、まるで透明人間のように扱った事実は世界中に衝撃を与えました。
ネットでもこの事件は大炎上し「仮にまったく同じことをアフリカ系の俳優やイスラム教徒の俳優に対しておこなったら暴動が起きていただろう」と指摘する声も目立ちました。のちに事態を収拾するような記事が出ています。
■東洋人は、いまだに差別される存在
しかしアメリカやイギリスの白人の世界では、ロバート・ダウニー・Jr.やエマ・ストーンのような態度や感覚が実は主流です。態度や口には出さない人も多いのですが、ポリコレをそのまま信じるのは危険です。実際の社会は東洋系にはまだまだ大変厳しいものです。
そもそもヨーは、マレーシア出身の中華系の成り上がりと認識されています。イギリスにバレエ留学していたにもかかわらず、英語はマレーシア華人の訛(なま)りのままです。
欧州と香港の金持ちたちと、結婚・離婚しています。ボンドガールを演じたこともありますが、90年代後半以後の北米や欧州でのキャリアは一時引退していたこともありパッとしません。プライベートが話題になることのほうが多く“過去の人”扱いされていました。
■「彼らは実力で受賞したのか?」という疑問
キー・ホイ・クァンは、ベトナム戦争のさなかに家族で死線をさまよってアメリカに避難した元ベトナム難民です。ユダヤ系のスピルバーグはキー・ホイ・クァン少年の才能を見抜き、『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』の準主役に抜擢し、『グーニーズ』でも主演キャストのひとりとして抜擢しています。
当時ハリウッドの映画には東洋系俳優、まして子役はほとんどいなかったので、これは大変な抜擢だったのです。一時はアイドルのように大人気になりました。
成長すると役がつかず、大学で映画製作を学び、その後は俳優業から引退し、武術指導のアシスタントとして映画業界にとどまり30年ぶりに出演者として復活した苦労人です。しかし移民の子どもによくあるパターンで、キー・ホイ・クァンも英語のアクセントはベトナム系のクセが強く、カンフーのレベルは高いのですが、演技力がついてこなかったために、大人の役者として大成していません。
一応ポリコレがあるので、彼らは賞を受賞したようですが、ハリウッドの業界筋はあまり快くは思っていなかったのかもしれません。助演男優と主演女優の無視は、彼らの受賞に激怒していた人がかなりいたことの表れでしょう。
■優秀であるがゆえに嫌われる東アジア人
礼儀も何も無視するレベルでの怒りの表明でしたが、アメリカ社会の白人やアフリカ系からは、差別を非難する発言は出なかったのです。差別だと怒っていたのはアジア系ばかりでした。
ここ最近は個人の多様性や黒人への人種差別に対する抗議運動であるBLM(Black Lives Matter/ブラック・ライヴズ・マター)が騒がれているのに、東洋人はこのような扱いをされるのです。そもそも東アジア人はいまだに立場が弱く、差別される対象です。
とはいえ東アジア人は、どこの土地でももっとも模範的な移民です。
北米でも欧州でも、すべての人種グループにおいて学歴も収入ももっとも高いです。専門職の割合も高いです。アメリカの場合、なんとインド系や東アジア系の収入のほうが地元に代々住んでいる欧州系白人よりも高いのです。また現地の進学校は東アジアの生徒だらけです。
アメリカの場合、東海岸や西海岸の名門校は、生徒の半分が東アジア系の学校もあるほどです。またイギリスにおいても私立の進学校の上位層は、東アジア系の生徒が多くを占めています。
■学力レベルは2年半も先に進んでいる
それは調査でも証明されています。
ロンドン大学のインスティチュート・オブ・エデュケーション(Institute of Education/IOE)の教育と社会統計の読み手であるジョン・ジェリム博士による研究では、学力レベルの高い東アジア諸国からの移民の子どもたちの学力は、15歳になるころには移民先西洋諸国の生徒よりも2年半も進んでいることを発見しました。
さらに経済協力開発機構(OECD)が設定した2012年の学習到達度調査であるPISA(ピザ)の数学試験を受けた1万4千人以上のオーストラリアの生徒を比較したところ、主に中国大陸出身者が多い東アジアからの第二世代の移民生徒は、オーストラリア生まれの生徒よりも平均で102点も点数が高かったと結論づけています。
ジェリム博士は、親の教育などの家族の背景要因が、東アジア人とオーストラリア生まれの生徒との学力差の要因のひとつだと指摘しています。この調査の対象となった276人の東アジアの第二世代の子どもの父親の半数は大学卒でしたが、オーストラリア生まれの子どもの父親では4分の1でした。東アジア移民家庭は教育熱心で、子どもを良い学校に通わせるので、学習進度にも大きな差が出ているのです。
さらにイギリスでも中国系の子どもたちの学力は、あらゆる人種の中でもトップで、中学生の際に受ける全国統一試験である「GCSE」(ジーシーエスイー/中等教育修了資格)の結果も全国平均を大きく上回るものでした。
■おとなしい性格なので嫌な仕事を断れない
そのいっぽうで、東アジア系の犯罪率はもっとも低いのです。職場で不正をする可能性も低く、非常に安定度と信頼の高い人々です。
ところがこうした模範型移民だから、地元の恨みをかってしまう側面もあります。
東アジア系の人たちは自己主張しないうえに暴力に訴えることもないので、どうしても下に見られるのです。私生活でもビジネスでも利用されてしまうことが多く、職場では雑用や嫌な仕事を押しつけられることが少なくありません。
パーティーやイベントでは壁の花のような状態で無視されてしまうこともしばしば。優等生は嫌われるのです。
■男の子はいじめや暴力の標的になってしまう
このような体験をしてきている東アジア系の人の中には、白人化しようと一生懸命になる人も少なくありません。アフリカ系のように、完全に分断された社会で生きようとする人もいます。
アメリカや欧州で実際に生活した人なら嫌というほど知っている事実として、東アジア系は結婚相手も友達もみんな東アジア系のことが多いのです。
また東アジア系男子の人生は困難だらけです。ほかの人種にくらべると小柄で体格が劣るため、いじめや暴力の対象になることが少なくありません。学校では病院送りになるレベルの暴力を振るわれることもあります。これは私の知人が体験した事実です。
いじめを避けるために、私立の学校に通わせることも珍しくありません。
これが日本のメディアではほとんど報道されない、東アジア系の生活の実態です。
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著述家、元国連職員
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
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