【社会】闇バイトに週刊文春記者が潜入した!「死体運搬も」「500万の案件」取材班が目撃した衝撃の実態《勧誘DM&交渉記録を公開》

【社会】闇バイトに週刊文春記者が潜入した!「死体運搬も」「500万の案件」取材班が目撃した衝撃の実態《勧誘DM&交渉記録を公開》

この記事では、闇バイトという現代の影の社会に迫る衝撃的な取材内容が紹介されています。週刊文春の記者が実際に潜入した経験を通じて、私たちが普段目にすることのない闇の実態が明らかになりました。特に、死体運搬や高額な報酬の案件についての具体的な証言には驚きを隠せません。危険な仕事に手を出す若者たちの現状について考えさせられます。

 凶悪な緊縛強盗の温床となっている「闇バイト」。いかにして若者を“リクルート”し、非道に走らせるのか。匿名アプリで金額が提示され、身分証の提示を求められて――。潜入取材した取材班が目撃した衝撃の実態とは。

◆ ◆ ◆

週刊文春記者が“闇バイト”に応募

「今日だったら新宿で200万の運び案件ありますよ」

——え、そんなのあるんですか。気になります。

「あります、あります」

——“運び”っていうのはクスリとか……?

「そうっすね。たまに死体とかもありますけど」

 週刊文春記者が“闇バイト”に応募したところ、電話口の男はあっけらかんとした口調でこう応えた。

 さらに詳細を知るためやり取りを重ねていくと、衝撃の事実が明らかになったのである。

 今年8月以降、首都圏で凶悪な緊縛強盗事件が次々と発生している。

「その数は18件にも上り、逮捕者は40名を超えています。警視庁と埼玉、千葉、神奈川の各県警は合同捜査本部を江東区青海のテレコムセンター内に設置し、全容解明に向けて捜査を進めています」(社会部記者)

「反省している様子は全くない」

 10月17日千葉県市川市の強盗事件で逮捕されるなど、計3件の事件に関与した藤井柊(しゆう)容疑者(26)。取材班は、彼の陰惨極まる手口を知る人物に接触することができた。逮捕後、千葉地検による取調べの待機中に同部屋になったA氏が語る。

「あいつは反省している様子なんて全くなくて、表沙汰になっている3件の事件以外にも『何件かやった』と淡々と話していました」

 A氏によれば、藤井が強盗を始めたのは10月初旬。1週間に一度、自宅のある愛知県から関東に乗り込み、無軌道な犯行を繰り返していたという。A氏が続ける。

「それぞれの報酬額は1件につき最低20万円。そこから奪った金額によって歩合が乗ると言っていた。犯行の際は指示役の男とテレビ電話を繋ぎ、指示を仰ぎながらやるんだと」

 まだ表面化していない事件では、4000万円が金庫に保管されていたという。

「その金を別の人間に渡し、資金を洗浄した後、120万円を受け取ったとも豪語していました」(同前)

 捜査当局には黙秘を貫きながらも、藤井はA氏に対してこんな自慢も口にした。

キャッシュカードの暗証番号を吐かせるためには手の指を折るんだよ。それで番号を聞き出したら、もう一回同じ指を折る。それでも同じ番号を口にすれば、その番号で間違いない」

 さらに、不敵な笑みを浮かべながら、過去の“武勇伝”も得意げに披露したという。

能天気に犯行を“自供”

「ある現場では、攫った女に対して、大人のオモチャを使って性的凌辱を繰り返したんだよね。それを指示役の男にテレビ電話で見せたらめちゃくちゃ喜んでいた」

 自身が犯した罪の重さに向き合うことなく、ひたすら能天気に犯行を“自供”していたというのだ。

 再びA氏が語る。

「いずれの現場でも指示役の男は同一人物だったようですが、『何者なのか全く分からない』と話していたのが印象的でした」

 こうした指示を実行役に下す男たちとは、いったい何者なのか。さる暴力団関係者が解説する。

指示役は詐欺から強盗に“鞍替え”した面々

「指示役の連中は、かつてオレオレ詐欺フィッシング詐欺をしていた面々です。日本で暮らしている人間もいるが、基本的には警察の目が届きにくいカンボジアやタイなどの東南アジアに拠点を構えて実行役に指示を送っているんです」

 なぜ彼らは詐欺から強盗に“鞍替え”したのか。その背景には「シグナル」や「テレグラム」といった匿名性の高い通信アプリの発達がある。

「連中には、これまで培ってきた犯罪のノウハウや詐欺のために集めた名簿がある。その上でこうしたアプリの匿名性に目をつけ、自らが手を汚さず犯罪収益を得られる方法を考え出したわけです」(同前)

 これが昨今続発する緊縛強盗事件に繋がっているというのだ。

 暴力団関係者が続ける。

「指示役の下につくリクルーターは多種多様。闇バイトで頭角を現して抜擢される者もいれば、もともと指示役の知り合いというパターンもある。彼らは実行役をリクルートするだけでなく、指示役からの命令を聞いて現場に指示を出すこともある。ただ、指示役と直接顔を合わせることはほとんどありません」

 リクルーターたちが実行役を集めるのは主にSNSだ。「即日即金」「高額報酬」「資金調達」といった文言を並べ立て、甘い言葉で“闇”の世界に引きずり込んでいくのである。

 では、実際彼らはどのような手口で若者たちを闇バイトに引き入れていくのか。

〈即金8000円です!〉

 取材班は、その闇の深淵を覗くため、身元を隠した上で、複数のバイト募集アカウントにDMを送信し、返信を待った。すると――。

〈シグナルのアカウントはお持ちですか?〉

テレグラムはやっていますか?〉

 5分も経たない内にメッセージが次々と届き、匿名性の高い通信アプリでのやりとりに移行させられる。その上で今度は次のようなメッセージが届いたのだ。

三菱UFJ銀行の口座を新規開設できますか?〉

仮想通貨取引所開設案件 即金8000円です!〉

 一体これはどういうことなのか。「ヤクザライフ」などの著書もあり、裏社会に詳しいライターの上野友行氏が解説する。

「銀行口座は詐欺業者が一番欲しがるもの。口座1つにつき3万円程で買い取り、詐欺で得た金の振込先として利用します。仮想通貨取引所の開設依頼も同様で、手配するのは主に“道具屋”と呼ばれる人物です」

 当然、銀行口座を他人に譲渡することは犯罪だが、

「口座を作るだけなので罪悪感が薄く手を出しやすい。その上“お前、口座作ったよな”と弱みを握られてしまうことで、更なる犯罪へ手を染めていくケースがよくあります」(同前)

ベランダに生ゴミで6万円

 他にはこんな案件も持ち掛けられた。

〈保証金や身分証明書などは一切必要ございません。匿名でできます〉

 どんな仕事かを尋ねると、

「マンションに住むある人のポストに釣り餌のオキアミを入れて3万円。ベランダに生ゴミを5個投げ入れて6万円です。1階なのでやりやすいと思います」

 これは、嫌がらせを受けた住民がマンションから退去するよう仕向ける“地上げ”に他ならない。

 次に依頼があったのは、こんな案件だ。

〈都内の違法経営をしているマンションに行って現金回収をお願いします。捕まることもまずないです〉

 一見すると簡単な仕事にも思えるが、実はそこに“罠”があるという。前出の上野氏が解説する。

「この案件こそ“タタキ(強盗)”の可能性が非常に高い。本来、金を回収するだけなら自分で行けばいい。それなのに他人に行かせるのは、後ろ暗いことがあるからでしょう」

 さらに「違法経営をしている」と書かれていることもポイントだという。

「かつてタタキと言えば裏カジノや違法風俗店といった場所が多かった。『違法な店や人間から金を取る』のであれば罪悪感も生まれないし、被害にあった店も警察に通報できませんからね」(同前)

 いとも簡単に紹介される闇バイトの数々。こうした勧誘を受けながら、小誌記者はリクルーターと電話で話すことにも成功した。それが冒頭のやり取りである。

“運び”では本人と親の身分証提示が必要

 電話口の男は体育会系で培ったような歯切れのいい敬語を使い、こんな提案をしてきた。

「“運び”だったら40万と200万の新宿発の案件があるんですけど、本人の身分証と親の身分証の提示が必要なんすよね」

——親の身分証は厳しい。

「なるほど。それなら報酬の半分を手付金として預けてもらうのはどうですか。まず40万の案件なら20万を払ってもらう。仕事が終わったら合計60万円を渡しますよ」

——新宿発で目的地は?

「本当にやるならお伝えします。リスクあるので」

 いったい何を運ばせるつもりだったのか……。さらに小誌は別のリクルーターとも接触。こちらは淀みのない澄んだ声色で、保険のセールスマンのごとく丁寧な話し方をする人物だった。

偽物のロレックスを売却するバイトも

 記者が1週間以内に100万円が必要だと言うと、こう返してきた。

「それならロレックスを売却しに行くことは出来ますか? 例えば質屋の『A』だったり『B』だったり。行ってもらって私どもの人員にお金を渡してもらえば任務終了です」

——それだけで100万円?

「1本あたり大体20万から30万の報酬額になるので、100万となると5本か6本回して頂きたい感じになりますね」

——リスクはゼロ?

「ちょっとそこ説明してなかったんですが、ロレックス自体が偽物なんですよ。でも、買取店での鑑定は確実に通るし、これまで動いて頂いた方で、誰ひとり捕まっていませんから。なんならこれ、僕が自分で行ってもいいような案件です」

逮捕リスクありのUD案件

 ここで記者が「他の案件はないのか」と尋ねると、

「あまりおすすめは出来ないんですが、いわゆるUD案件もあります。逮捕リスクありますけど」

 UDとは「受け子・出し子」のこと。オレオレ詐欺など訪問型の特殊詐欺で、被害者から現金やキャッシュカードを受け取るのが「受け子」で、被害者を騙して口座に振り込ませた現金をATMから引き出す役割が「出し子」である。

——いくらぐらい儲かる?

「その家からいくら取れるかにもよりますが、回収分の10パーセント。うちは基本、500万円からフォーカスしているので、ミニマム50万ですね」

 さらに記者が「すぐに金になる仕事はないか」と尋ねたところ、驚愕の案件が飛び出したのだ。

サイバー犯罪対策課の……」

「明日ならめちゃくちゃ良い案件があるんですが、めちゃくちゃ難しいですよ」

——難しい? 運びとか?

「明日、警視庁に行ってもらって、サイバー犯罪対策課に入る10名の顔写真を盗撮してきて欲しいんですよ」

——ハードルが高い……。

「C署かD署なんですが、何階でセレモニーやるのか分からないんですよね。だから署の中まで入ってもらって、無事撮影できたら50万円を払います」

 なんと闇バイト側は、大胆不敵にも警察までターゲットに据えていたのである。

 もっとも現在の警察の捜査では、指示役や首謀者の逮捕には未だ至っておらず、事件解決には程遠い状況にあるのが実情だ。何故なのか。

「『シグナル』や『テレグラム』の解析にてこずっているのに加え、警察組織特有の縦割り意識も弊害になっている。合同捜査本部には数百人規模の捜査員が詰めていますが、各県警の縄張り意識が強く、重要情報が全体で共有されていない」(捜査関係者)

複数の犯行現場であるリフォーム会社の関係車両が度々目撃

 こうした“縄張り争い”が起きる中、小誌は犯人グループに繋がる新情報を入手。複数の犯行現場で、あるリフォーム会社の関係車両が度々目撃されているというのだ。

「ただ、この会社には強盗とは別件の容疑がかかっており、迂闊に手出しができない」(某県警関係者)

 取材班はリフォーム会社の代表を直撃した。

——御社の車両が一連の広域強盗の現場で何度も目撃されている。

「ウチは普通に建設関係の会社。首都圏エリアは営業で回るので、その付近を通ることはあると思うんですけど、当然強盗には関与していませんよ。うちも逆に被害を受けているというか。こういうご時世で、通報されることが多いのですが、警察がきちんと調べればわかると思うので」

 警察も指をくわえているばかりではない。今月2日、初めて強盗事件のリクルーター役を逮捕したのだ。

「金に困ってSNSで闇バイトに応募し、人を集める仕事を始めた」

 逮捕後、そう供述しているのは愛知県知多市の会社員・名倉優也容疑者(31)。名倉は先月1日、実行役3人に対し、所沢市の住宅に押し入らせて現金16万円などを奪わせた上、住人の男性に怪我をさせた疑いが持たれている。

 名倉は果たして指示役とどう繋がったのか。実家を訪ねると、インターホン越しに母親がか細い声でこう答えた。

「まだ何も分からないんです。そんなことをするなんて想像がつかない……」

 名倉を知る近所の住人はこう言って肩を落とす。

「優也くんは本当に優しい子だったのよ。おじいちゃんが亡くなって、1人になったおばあちゃんをよくお世話してあげていてね。車でお買い物に連れて行ってあげたりしていたの。そんな子が一体どうして……」

 それまで普通に暮らしていた若者が、突然、闇へ転落する。その深淵への入り口は、日常生活のすぐそばに潜んでいる。

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(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年11月21日号)

露木康浩警察庁長官

(出典 news.nicovideo.jp)

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