【国際】韓国政治の“欠陥”を木村幹教授が指摘「法律の解釈が2つできた」「昔はボスが調整してきた」「共通のニュースソースがない」…尹大統領拘束
【国際】韓国政治の“欠陥”を木村幹教授が指摘「法律の解釈が2つできた」「昔はボスが調整してきた」「共通のニュースソースがない」…尹大統領拘束
15日、韓国では非常戒厳を巡り「内乱」の疑いで捜査が進んでいた尹錫悦大統領に対して捜査当局が拘束令状を再執行し、大統領公邸に進入し拘束した。
一連の出来事の“原因”と“今後”について、政治学者で神戸大学大学院教授の木村幹氏に聞いた。
木村氏は尹大統領が描いた“筋書き”について「『戒厳令を出して国会を封鎖し、大統領令によって政治を行う。そうすれば、野党やその背後にいる北朝鮮に騙されてきた国民も自分たちの誤りに気づくだろう』と想定していたようだ。尹大統領は大統領になったものの国会は野党に支配され、国民の支持率もあまり上がらず『こんなはずじゃない』という不満があり、その原因が『世論操作』と『不正選挙』にあるとしたのだ。そこで『民主主義を止めて、国民に“(尹大統領にとっての)真実”を知ってもらおう』と考えたのだろう」と分析した。
さらに木村氏は韓国政治の「制度上の欠陥」を指摘する。
「裁判所が適正に出している逮捕状であるため、本来であれば全ての国家機関が従うべきだが、尹大統領や大統領警護庁は捜査そのものの合法性を認めなかった。つまり、法律の解釈が国の組織の中で2つできてしまい、結果として一触即発の状態になった」
「韓国は1987年に民主化されたが、その際に『元々軍事政権が持っていた大きな権限を持つ大統領をみんなで選ぶ』という形になってしまった。大統領警護庁などはその遺産だ。制度上の欠陥を抱えながらも昔は金大中元大統領などのボスが調整してきた。だが、ボスがいなくなると世論は分裂、誰もまとめてくれる人がいない状況が10年ほど続いており、その混乱は大統領が次々弾劾されるという事態にも現れている。民主化からもう38年も経っているため、一旦見直すべきところに来ているのではないか」
さらに現在の韓国では「共通のニュースソースがない」という問題も抱えているという。
「日本と比べても、テレビ・新聞といういわゆるオールドメディアの権威が全くなくなっており、紙の新聞を探すことも難しい状況だ。結果的に情報ソースがインターネット上のものにならざるを得ず、バイアスが働いて、世論が大きく分かれている状況にある」
大統領が拘束されたが「今後」はどうなるのか?
木村氏は「近々出される世論調査が状況を明らかにしてくれるだろうが、今回の尹大統領のメッセージは効果的だった。広く一般に受けるかどうかはともかく、大統領の支持者にとっては『その通りだ!』という内容だ。そういう意味でも、今回の件で大統領や与党の支持率が下がって一挙に弾劾、さらには野党候補の大統領当選という流れにはならないだろう。まだまだ長い道のりになるが、これを契機にして与党と野党、保守と革新がどういう話ができるかにかかっている」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)