【国際】「韓国は崩壊する」北朝鮮国民の間に漂う緊張感
【国際】「韓国は崩壊する」北朝鮮国民の間に漂う緊張感
「韓国経済は崩壊する!」
日韓関係が最悪に陥っていた2010年代、日本の書店の店頭にはこのようなタイトルの本が大量に並んでいた。いわゆる「嫌韓本」だ。ちょっとした出来事を針小棒大に取り上げたり、韓国人の民族性を云々したりと、その内容は様々だが、長年の閉塞感から来る不満の矛先を韓国に向け、溜飲を下げるという共通点があった。
「韓国崩壊するする詐欺」などと揶揄されたこれらの言説だが、北朝鮮でも今、似たようなことが現象が見られると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えている。
朝鮮労働党咸鏡北道委員会や各市・郡の党委員会の民防衛部は今月10日、道内のすべての機関、企業所に次のような中央の指示を伝達した。
「傀儡韓国の情勢がわれわれに有利な局面となっている。高度な緊張状態を維持しながら全面的な民間防衛訓練を実施せよ」
韓国の高位公職者犯罪捜査処や警察などの合同捜査本部は15日、昨年12月に「非常戒厳」を出した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を、内乱容疑などで拘束した。また、大統領の弾劾裁判が行われており、遅くとも4月までに結論が出されるとの見方がある。
いずれにせよ、韓国では今年中に大統領選挙が行われる可能性が高いと言えるが、最有力候補と目されている野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補に嫌悪感を持つ有権者も多く、しばらくは政治の混乱が続きそうだ。
北朝鮮の指示もこのことを取り上げている。
「傀儡韓国の大統領と権限代行の両方が職務停止状態に置かれ、法廷に立たされることになった。このような時こそ、敵どもの軽挙妄動に厳しく対応しなければならない」
韓国の不安定な政治状況を取り上げ、警戒せよと呼びかけているのだ。一方で、自国は安定していると強調した。
「敵対的2国家の決定を行った(朝鮮労働)党の賢明な路線があったゆえに、われわれはいかなる情勢にも揺らぐことのない政治的環境を維持している」
その一方で、警戒しつつも普段通りの生活を送るよう要求した。
「現在の厳しい傀儡韓国の政治環境に抗い、持続的な動員態勢を維持した状態で日常的な事業、生活、生産活動を並行しなければならない」
韓国は政治的混乱の中にあっても、社会や経済は通常通りに動いており、むしろ危機的状況にあるのは北朝鮮の方だ。それはともかく「傀儡韓国の崩壊」というパワーワードは、主要機関、企業所の幹部の間で相当な注目を集めている。
「韓国の情勢が尋常ではないという点を強調し、動員態勢のさらなる強化を求める対応に、幹部たちは今回の指示を通常より重く受け止めている」(情報筋)
実際に戦争が起こったと仮定して行われる訓練でも、ちょっとした冗談さえ許されないほど緊張した空気が漂っているとのことだ。
この指示の内容は庶民の間でも噂で広がり、「韓国は本当に崩壊するのではないか」との憶測が飛び交っていると情報筋は伝えた。
韓国の政治状況は、時々刻々と変化しており、情報を得ている人でもついていくのが難しいほどだ。ましてやリアルタイムで情報が得られない北朝鮮の人びとが「韓国が崩壊するかも?」と思ってしまうのは致し方ないだろう。