【社会】海外売春は甘くない「身体で稼いだお金がパーになるんですよ」 悪質ホストに貢いだ20代女性の回想

【社会】海外売春は甘くない「身体で稼いだお金がパーになるんですよ」 悪質ホストに貢いだ20代女性の回想

この記事では、悪質なホストに貢いだ女性の体験を通じて、海外売春の厳しさが描かれています。彼女の回想からは、表面的には輝かしい生活があったように見えても、実際には多くのリスクや犠牲が伴うことが理解できます。

正規の出張目的で向かったのに「売春の疑い」をかけられ、入国審査時に「待った」をかけられる。20〜30代の女性ビジネスパーソンが意図せずこんな事態に巻き込まれるほど、日本人女性による海外売春が広がりを見せている。

ホストへのツケ払いである「カケ」(売掛)を返すため、2022年〜24年の間に米豪に4回出向き、計3650万円を稼いだという女性が取材に応じた。彼女の話からは、命を落としかねないリスクや、時としてお金を手にできない場合があるなど、危うい実態が浮かびあがる。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●接客中に意識が飛んだことも

3時間半を超すインタビューで筆者に証言したのは、元ホス狂のアヤさん(20代・仮名)。ホストに貢ぐお金を稼ぐことを主目的に海外売春を繰り返した。

1回目 2022年3月から米国に1カ月、手にした金額は600万円
2回目 2022年10月から米国に2カ月半、同1500万円
3回目 2024年6月から豪州に2週間、同350万円
4回目 2024年7月から米国に2カ月、同1200万円

1、2回目は大阪ミナミのホスト、3、4回目は新宿・歌舞伎町のホストに使った。2023年が抜けているのは、当時は年上の男性と結婚していたから。「生き方が変わるかな」と希望を抱いて家庭を持ったが、結局、長続きしなかった。

海外では危険な目には遭わなかったのだろうか。

「アメリカで接客中に意識が飛び、気が付いたらベッドに横たわっていたことがあります。相手をした男が『媚薬』を使うと言っていたから、その影響ですね」

一歩間違えば大事故を起こしかねない経験を淡々と口にした。アヤさんは、その媚薬は合成麻薬のMDMAだったのではないかと推測する。男性がコンドームに塗ったことから、アヤさんは直接、その成分を体内に吸収することになり「飛んで」しまった。

●「海外売春は稼げるけど、甘くない」

「そんな危険行為をする男性を店側は、何で出禁にしていないのですか?」。日本の風俗店では働く女性を守るため、スタッフが危険やNG行為をする男性をあらかじめ排除することがある。そんな「日本基準」に立ったこの質問に、アヤさんは苛立ち交じりに答えた。

「長くて1カ月とかで消える日本人女性をアメリカの店が守ろうと考えますか? 客である男にうるさいことを言ったら、来なくなる。常連を優先するのは当然ですよ」

こう一気にまくしたてたあと、次の言葉を付け加えた。

「海外売春は稼げるけど、甘くない。SNSで宣伝しているような『楽して稼げる』なんてことは、絶対にない。覚悟ある女性だけが、やれる世界なのです」

こうした修羅場をくぐり抜けてきただけに、アヤさんの言葉には重みがあった。

●紹介されたエージェントに手引きされて海外へ

アヤさんはお酒が飲めるようになった20歳以降、ホストクラブに居場所を求めた。風俗店で働きながら、西日本にある地元から大阪ミナミの店に週一回のペースで通った。

アヤさんは酔っぱらうと、担当ホストに甘くなる。素面のときは「カケは嫌だ」と言えるが、いい気持ちになり、「頼むよ」「いいよね」と懇願されると応じざるを得なかった。

カケがたまってきた2022年春、友人に紹介されたエージェントに手引きされ、1回目の米国への海外売春に出た。

2週間ほど滞在したのは、ニューヨーク市クイーンズ区にあるチャイナタウン「フラッシング」。中国系「ボス」と「ハウスキーパー」2人がいる一軒家に部屋を与えられて客をとった。

この売春宿では、20〜30代女性が5、6人いたが、日本人はアヤさんのみで、他は中国系。客である中国系男性たちの間でたちまち人気となる。

この店で用意されていたのは、2コースだ。

・メインのショート・・・時間30分で客の支払い260ドル、アヤさんの手取りは140ドル
・選ぶ客は少ないロング・・・時間60分で支払い400ドル、アヤさんの手取りは260ドル

客の支払いからアヤさんの手取りが35〜45%減るのは、店の取り分やエージェント代金のためだ。

このときの渡米では、ニューヨーク市マンハッタン区のタイムズスクエアでも客をとった。世界各地からの来訪者で賑わう著名観光地のとあるビルが「職場」となった。

●日本人女性だらけになった売春宿

1回目の2022年3月と4回目の2024年7月の間に、2年4カ月が経過した。1回目は、日本人女性ということでアヤさんは人気となったが、2024年の渡米時は状況が変わった。

この4回目のとき、アヤさんはサンフランシスコから入国し、ニューヨークボストンロサンゼルス、再度ニューヨークへと転々と移動した。

「もうどこに行っても、日本人女性がいるようになっていました。まったく珍しくないし、日本人女性ばかりをそろえている店もあったぐらいです」。

タイムズスクエアにあり、日本の古都の名前を店名にした店舗がそれに当たると教えてくれた。

そして、日本人女性の増加は、アヤさんの稼ぎにも直結する。アヤさんは4回目のとき、最初はエージェントを通していなかった。エージェントの元には多数の女性からの情報が集まるため、どの地域が儲かるかわかる。

アヤさんは2024年8月上旬、次のような文章が入った動画をインスタグラムのストーリーにアップしている。

〈部屋綺麗なのは良いけど全然稼げない
エージェント通してないから誰にも言えん
もういや
AGまた通してがんばるわ〉

●お金を回収できず泣き寝入りすることも

総数が増えるに従い、自らの手取りを増やすためエージェントを通さずに、店にやってくる日本女性も増えた。しかし、こうした女性の場合、客がとれたとしても日本への送金がネックとなる。

米国の店舗が、女性に送金役をあてがう。米国滞在中、その送金役は日々の稼ぎを女性に報告してくる。女性を安心させ、次の日の接客にやる気を持たせるためだ。そして、女性が帰国する際には、追って日本にお金を持って行くと約束する。

「ところが女性が帰国すると、音信不通になるのです。闇で稼いだお金だから、その彼女は警察に駆け込めない。まして米国に取り立てにも来られない。泣き寝入りするしかないありません。身体で稼いだお金がパーになるんですよ」

少なくない数の女性が、こうした事態に陥ってるようだ。

先に挙げたような薬物関係の危険に加え、中国系店舗で提供される食事が合わないことや言葉の壁など、海外売春にはリスクとストレスが伴う。薬を使わないまでも、乱暴に振る舞ってくる男性もいる。

こうした中、アヤさんが安心できた数少ない点の一つが、男性客のコンドーム着用が徹底されていたことだ。これは店舗からの要望でなく、男性が性病予防のために自主的に実施する。

「日本の風俗では、ノースキンを望む男が多い。お互いにとって危ないのに」

多数の男性の相手をしてきたアヤさんだが、海外売春で性病にかかることはなかった。

大谷翔平選手の試合を観戦した「良き思い出」

長くなったインタビューの間、アヤさんは湿っぽく、計約6カ月にも及ぶ海外売春の経験を振り返ることはなかった。2024年の渡米時、ロサンゼルスで、米大リーグ大谷翔平選手の試合を観戦したことなどは、むしろ良き思い出として話した。

筆者は以前、マカオでの海外売春を経験した女性を取材したことがある。帰国後に不正出血などを経験したこの女性は「とてもつらい経験」と捉えており、インタビュー中に取り乱すほどだった。

アヤさんの当時の心境を推し量るには、彼女が現地で作成したインスタのストーリーのほうが適切なのかもしれない。共に1回目となる2022年の渡米時に次のように漏らしている。「オンライン試験」とあるのは、通っている学校で実施されたテストだ。

〈部屋広すぎてエアコンきくわけない、寒い地獄〉(2022年11月上旬)

寝不足でクタクタすぎるけどいまからオンライン試験うけるけど、もうありえんくらいヘトヘト。もう体力ぜんぶ使い果たした。えぐい。〉(同上)

〈弱音やけど2000むり1800やな、もう高望みしすぎて頭おかしくなるから自分にあった金額よ、〉(2022年11月中旬)

海外売春は甘くない「身体で稼いだお金がパーになるんですよ」 悪質ホストに貢いだ20代女性の回想

(出典 news.nicovideo.jp)

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