【社会】パワハラ上司が「退職した部下の暴露」で降格に…それでも仕切り続けた上司を「女性社員が一喝」した結果…

【社会】パワハラ上司が「退職した部下の暴露」で降格に…それでも仕切り続けた上司を「女性社員が一喝」した結果…

パワハラに対抗するためには、声を上げることが重要です。この事例は、女性たちが団結して立ち向かうことで、職場のあり方が変わる可能性を示しています。こうした勇敢な行動が、今後の職場環境を改善するためのモデルとなって欲しいと願っています。

 会社員にとって、人事はその後の人生を左右する一大事である。人事は一般的には昇格が前提だが、不祥事などにより降格人事がなされることも最近は珍しくない。

◆部下からも慕われて異例の出世を果たすも…

 コンサルタントとして働く山本祐二さん(仮名・40歳)は上司が降格されるのを目の当たりにした1人だ。

「Mさんは私より2つ年上の42歳で部署ではエース級の存在でした。部下からも慕われ、営業成績も抜群。私もよく飲みに行って、これからのビジョンを語ったりしました。その成果が認められ、異例の早さで部長に抜擢されたのですが、そこからが彼にとっては茨の道となったのです」

 Mさんは部長に就任すると、すぐに部の“改革”に手を付けた、売り上げ目標の再設定、部下のタスク管理といったことなどから、会議の進め方にいたるまで細部に及んだ。当初は新任上司が意気込みを見せるためと山本さんたち部下は思っていたのだが……。

「『売り上げを2倍にする』と大風呂敷を広げたのですが、今の人員でそれを達成するなら2倍どころか3倍近い仕事量をこなすことになります。加えて、タスク管理という名目で私たちの行動を逐一チェック。カレンダーの予定表にないことをしていると呼び出して説明をさせることもありました。毎週行われている会議では、これまでは進捗の報告程度だったのが、それぞれの課題を毎週報告して、みんなでその課題解決に向けて意見を出すことを命じたんです。『今週は、特に課題はありません』は通用せず、必ず発表することが求められました」

 会議で何かしらを必ず発表しなければならなくなったことで、悪いことばかり議題に上がるようになっていったという。

「その結果、話すことがないので仕事で起こした些細なミス、例えばメールを送り忘れていたとか、そういうことを報告する人が出てきたんです。すると、Mさんはそうしたミスを会議であげつらい、私たち部下にもその人の悪い点を指摘するように求めてきました。もはや会議ではなく、総括と糾弾する場でしたね」

◆売り上げ倍増計画のためにで部下に残業とパワハラ

 Mさんが就任して間もなくすると部内の雰囲気は最悪に。それまでは仕事終わりに連れだって飲みに行ったりしていたが、誰もが疑心暗鬼になり、リモートワークを申請して会社にも寄りつかなくなってしまった。

「売り上げを2倍にすると言ったため、Mさんは大量に仕事を取ってきました。それを社員に割り振って対応させたため、ただでさえ業務量が多かった社員はパンク寸前に。業務時間外でもお構いなしにメールや電話で指示を出してきました。例えば、21時に『F社に企画提案することが決まったので、明日の13時までに企画書と見積もりを作ってください』というメールが来たこともありましたね。翌日の朝にそのメールに気づき、さすがに腹が立って『こんなスケジュールで提出は無理ですし、夜中に言われても困ります』と伝えると、『じゃあ、今からやって』と一言。こりゃダメだなって思いました」

 中堅社員である山本さんに対してもパワハラといえる行動をとっていたが、若手社員に対しては、それ以上に厳しいことをさせていたようだ。

「私のような中堅社員にはそこまで強く言えないので、若手にそのしわ寄せがいったんです。『できないから、できるに生まれ変わらなきゃ、この先やってけないよ!』みたいなこと言って、夜中までZOOMで打ち合わせやりながら企画書作らせてましたからね。さすがにアカンやろって思って、『もう少し穏やかに対応したほうがいいですよ』って伝えたら、今変わらなきゃダメなんだよ!って逆に怒られました(苦笑)」

 これまでは「みんなのよき理解者」として後輩にアドバイスをするような存在だったMさんだが、気がつけばただの“パワハラ上司”に成り下がってしまったのである。

◆懐刀の部下が退職して崩壊へ

 Mさん自身、部長昇格ということで意気込んでいたのだろうが、周囲の評価は散々。半年もすると誰もがMさんに対しての不満を口にし、中にはさらに上の上司に直訴する者も現れたのだが、Mさんの暴挙は一向に止むことなく続いた。

 だが、1人の若手社員の退職がきっかけで大きく流れが変わることとなる。

「Mさんが一番可愛がっていた若手社員のW君が退職したんです。Mさんにとっては寝耳に水。それどころか、W君は退職間際に人事部長、役員にMさんの横暴や部の雰囲気が最悪になったことを長文メールで暴露したんです。さらにMさんがW君の退社に際して『飼い犬に裏切られた心境だ』って話していたことも役員に伝わってしまいました。一応、ウチの会社は“ホワイト”を売りにしているので、社長以下役員は激怒。急遽調査チームが作られ、Mさんの所業に対する聞き取り調査が行われたのです」

◆「部長」から「担当部長」に降格

 調査では深夜残業の強要やパワハラ行為が噴出。結果、Mさんは「部長」から降格することになり、今までになかった「担当部長」という役職になる人事通達がなされたのである。こうして新部長の下、山本さんの部署に平穏が訪れることになると思いきや、混迷の度合いはますます深まっていったのであった。

「新任の部長は別部署のKさんという50代半ばの超ベテランの方です。部長が代わるわけですから、引継ぎ作業がありますよね。この引継ぎを名目にMさんは実質的な部長として振る舞うようになってしまったんです。会議も『Kさんが慣れるまで私がしばらく会議を取り仕切ります』って言い始め、みんな『降格したのになんで?』となりました。会議もこれまで通り、総括と糾弾がまかり通るイヤな雰囲気のままでした」

 部内の会議だけでなく、社内で行われる部長会議にもMさんはなぜか参加。他部署の部長には「Kさんに引き継ぐため、サポートとして参加しています」と伝え、K部長を差し置いて堂々と今後の企画などについても発言していたという。これには他部署の部長もさすがに顔をしかめたようだ。

「降格になったから、焦って自分の価値を認めてもらおうと躍起になってしまったんでしょうね。これまで一度もなかったクライアントへの訪問も勝手に始めて、お客さんから『M部長から挨拶に伺いたいと連絡があったんですが、(社内で)何かあったんですか?』って連絡があってビックリしました」

◆女性社員の一喝で……

 こうした状況に業を煮やした社員たちは、新部長のKさんに状況の改善を訴えた。K部長は「わかった。私からM君には話すから」と言い、次の会議で説明すると話したのだが……。

「会議が始まると、Mさんは身内に不幸でもあったのかというくらい暗い顔をしてました。K部長が『いろいろ混乱させてしまい申し訳ない。引継ぎも終わったと私は認識していますので』と言うと、Mさんは『これまでもみんなのため、K部長のためと思ってやってきました。これからもサポートしていきたいと思いますので、これからも私が会議を進めてもいいでしょうか?』って言ったので、もう、みんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔になりました。『お前がまだ会議やんの?』って」

 みんながポカンとしていると、ある女性社員が一言。

「もう、ヤメてください」

 Mさんは「わかりました」と絞り出した。

◆そして肩書きだけが残った…

 それ以降、Mさんは口出しすることもなくなったようだ。山本さんは「変な肩書きのせいで未練が残ってしまったんだと思います」と話した。

「そりゃ役職付いて気合いが入るのはわかるんですが、最初は良い兄貴のノリでよかったんです。我々もそういうリーダーを求めていたし、会社もそれを求めて部長に抜擢してるわけですから。降格人事なのに『担当“部長”』なんて肩書きをのこしたもんだから未練が残っちゃったんですよ。会社の温情なんでしょうけど、キッチリと責任取らせたほうがよかった思いますね」

 そんなMさん、もはや誰も口をきく人もいなくなり、一人黙々と仕事をこなす日々を送っているという。降格となってもなおしがみつこうとした男は、会社でも居場所はなくただただ肩書きにしがみついているだけの日々を送っているようだ。

文/谷本スス

【谷本ススム
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

写真はイメージ

(出典 news.nicovideo.jp)

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