【国際】「国民が無学なほうがコントロールしやすいから?」トランプ大統領「教育省の廃止」アメリカZ世代が政府に危機感
【国際】「国民が無学なほうがコントロールしやすいから?」トランプ大統領「教育省の廃止」アメリカZ世代が政府に危機感
ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
2月26日(水)のテーマは「ヤバすぎる給食、エアコンなし教室…トランプの意向通り教育省が廃止されたら? ニューヨークのZ世代が激論」。教育省の廃止を求めるトランプ氏の考えについて、アメリカのZ世代が話し合いました。
※写真はイメージです
◆トランプ氏が求める「教育省の廃止」 Z世代の懸念は?
前回の放送では、イーロン・マスク率いる政府効率化省が、150兆円という大幅な予算カットと連邦政府職員の20万人の人員解雇を目指し、連日大鉈(おおなた)を振るっているという話題についてディスカッションをしました。
そんなトランプ氏が次に狙っているのは、実は教育省。それも教育省自体を廃止したい意向を表明しています。日本でいえば文部科学省自体を廃止するというようなインパクトを持ちますが、これについて小学校から大学まで公立教育を受けてきたラボのメンバーたちは強い懸念を抱いています。
アメリカ教育省の予算のなかでも特に大規模なのは、低所得世帯の子どもの教育支援や、障がいのある子どものための予算。アメリカの教育省は「あらゆる人の平等な教育機会の確保」のために存在しています。そんな教育省を、トランプ大統領はなぜ廃止しようとしているのでしょうか。ラボのメンバーが意見を出し合いました。
シャンシャン:トランプはなぜ教育省を廃止したいの?
メアリー:あるべきではない出費だから(と、トランプ氏は考えている)。
シャンシャン:あるべきではない出費? 国の将来のための教育が? 馬鹿げている。
メアリー:彼らが言うには、教育省は膨大な資金を浪費していて、生徒のためにはなっていない。だから政府の資金で運営する代わりに、各州の予算でまかなってもらおうということみたい。
シャンシャン:そんなことを言っても裕福でない州もあるよね。そういう州は困ると思うよ。お金のない州では生徒の勉強が遅れるよね。教科書だって高いんだから。普通に買ったら子ども1人につき100ドル(15,000円)くらいになるんじゃないかな。親の負担が増える一方だよね。
ミクア:私も教育省の廃止は、いいことだとは思えないな。税金が安くなるわけでもないしね。つまり、私たちが払った税金が教育費に回っているわけでしょう。その上もっとお金を使わなければいけなくなるの? 私立の学校に通うのと同じくらいに?
シャンシャン:お金がないとアドバンス・プレイスメント(※)のクラスも受けられなくなるんじゃない? 中学生になると、専門的な勉強をするために選抜される生徒がいて、高校での勉強を早めにスタートさせることができる。
今はそのための授業料免除があるでしょう? テストやその他もろもろの受験料も免除される。低所得だけど賢い生徒に、政府が資金を提供しているようなものだよ。でももしそれがすべて親の負担になったらどうなるの? テストは何百回もあってすごく高いんだよ。
ミクア:アドバンスト・プレイスメントにお金がかかるなんて知らなかったよ。私の学校は、みんな中流から下層階級の人たちばかりだったから。
※「アドバンスト・プレイスメント」…高校生に大学初級レベルの授業と試験を提供するプログラム。試験で高得点を取れば大学の単位が取得でき、大学進学後には単位互換ができるため早期卒業による授業料の節約などにもつながり、優秀な成績を残せば大学入試時にも有利に働くようになる。
アメリカではたとえ公立の学校でも、優秀な生徒がレベルの高いクラスを受けるためにはたくさんのお金がかかります。そのため中低所得者の子どもでも、富裕層と同じチャンスを得られるように、こうしたクラスやテストの費用は政府によって免除されています。
今回発言したミクアとシャンシャンは、それぞれ医師と医師助手になるための勉強をしている最中です。自分たちがここまでこられたのは、政府の費用援助のおかげだということが身に染みてわかっているだけに、「もし教育省がなくなって予算カットされたら?」という危機感も並大抵のものではありません。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆「給食」がさらに悲惨なことになってしまう?
さらにラボのメンバーたちが心配しているのは「給食」。現在は低所得者層は給食費も免除されていますが、教育省の廃止によって子どもたちの給食にも影響が出ると言われています。
シャンシャン:私は中流以下の家庭の出身なので、給食費は免除されていたんだよね。知ってる? 給食費を徴収するかどうかは給食費申請書で決まるんだよ。用紙に記入するんだけど、実際の収入より低く書いてもかまわない。なぜって貧しい生徒が多い学校ほど、より多くの援助を受けることができるからね。
これがトランプの言う「資源の無駄遣い」なのかもしれないけど。でもアメリカの給食はひどいもんだよ。ハンバーガーだってパンの間にはお肉のパテをはさんだだけで、他に何にも入っていないんだ。
メアリー:野菜は一切入っていなかったよね。少しマシなのはピザくらいかな。
ミクア:あとは具材がチーズだけのサンドイッチとかね。
シャンシャン:ちょっと豪華な日はパック入りの生のニンジンが配られるんだ。パック入りのリンゴとかね。最近ようやく給食が少し改善されたけど、教育省が廃止になったらそれもどうなるのかわからない。毎日フライドポテトだけを食べろっていうの?
ミクア:食べ物に給食費を払わなければならないだけでなく、教室にはエアコンもないんだよ。他の多くの国にはある基本的なレベルのものがアメリカの学校にはない。
考えたくないけど、政府は国民が無学なほうがいいと思っているんじゃないかって。そうすればみんな何も考えずにお金を払って、企業が儲かり富裕層はもっと豊かになる。だから政府にとっては、もっとみんなが貧困になってくれたほうがありがたいんじゃないかって思ってしまうよ。
もちろん、お金持ちが通う私立学校は話が別ですが、栄養のバランスが考えられた日本の給食に比べ、アメリカの公立校は給食も十分な栄養が取れるものだとは言い難いです。高い学費を払う余裕のある人は私立校へ行き、学費と食費を払ってもらう。そしてその私立と公立のギャップを埋めるために、教育省の予算が存在しているのです。
トランプ氏はそんな教育省を廃止しようとしており、これにはラボのメンバーからも「国民が無学なほうがコントロールしやすいからでは?」という声が上がってしまうほど。彼らの危機感と政府への不信感は想像以上でした。
トランプ氏が教育省を廃止したい理由は予算カット以外にも、“リベラルになりすぎた”教育を正したいという意図もあるとされています。保守が言う「リベラル教育」とは、多様性や社会正義について教えることを指します。差別の歴史やLGBTQ+について教えることは、アメリカの未来にとって害になるという保守派の極端な思想は、教育省廃止に結びついていると考えられています。
シェリーは「教育は国の未来を作る土台。教育省があるかないかで、アメリカは全く違う国になってしまう可能性もあります。これまで以上に格差が広がってしまう可能性もありますね」と、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/
