【国際】幼稚で残酷で女嫌い…トランプを大統領に押し上げた「アメリカ版2ちゃんねる=4chan」の実態

【国際】幼稚で残酷で女嫌い…トランプを大統領に押し上げた「アメリカ版2ちゃんねる=4chan」の実態

匿名性のあるオンライン交流が、過激な意見を助長する可能性があるという指摘は特に重要です。これからのアメリカの政治にも影響を及ぼす要素として、ネット文化のあり方について引き続き考え続ける必要があると感じました。

 11歳の少女に自殺をそそのかしたことも…アンモラルなネット民たちが支配するアメリカ版2ちゃんねること「4chan」。そこではどんな人物たちが、どんな投稿をしているのか? 陰謀論集団「Qアノン」が誕生するきっかけにもなった同サイトの歴史を、新刊『普通の奴らは皆殺し インターネット文化戦争 オルタナ右翼、トランプ主義者、リベラル思想の研究』(Type Slowly)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

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「アメリカ版2ちゃんねる」こと「4chan

 2010年台の初頭、インターネットを中心とする新しい抗議の波が右派と左派の共闘を可能にしたことを評論家たちは称賛していたが、ネットワーク的でリーダー不在のインターネットを中心とした政治における政治的根拠のなさは、今となっては無批判に賞賛すべきものではないように思える。

 アノニマスの活動は何年にもわたって、リバタリアン的な左派や右派、そしてその中間にあるあらゆる立場に一貫性なく同調してきたし、ジャスティン・ビーバーのファンからフェミニストファシストサイバーセキュリティスペシャリストなどをターゲットにしてきた。まるで労働者階級が読むと低級扱いされてきたタブロイド紙と同じような倒錯的な自警団活動だった。

 4chanアノニマス、それらとオルタナ右翼との関係が含む一見矛盾したポリティクスを理解するためには、4chanの政治板/pol/を中心とした掲示板文化が徐々に右傾化していったことを思い出すことが重要である。それほどはっきりと政治的なものではないが、常に極端なものであったランダム板/b/と比べると、このことがよくわかる。

 AnonOps IRCというチャットシステムに集まったリベラルでより犯罪的な「モラル・ファグ(正義派のアノニマス)」たちは、2010年から2012年にかけてアノニマスの注目度が高まるなか、警察にマークされ自由に活動できなくなりはじめていた。掲示板カルチャーのなかに左派寄りのリバタリアンが不在であったことは、これによりリベラルアノニマスが不在となり、反ポリティカル・コレクトネスのショッキングなスタイルによって、4chanに右派が流入する原因となった。

 4chanは日本のアニメをシェアするユーザーたちとともに始まり、10代のクリストファー・プール(mootとして知られる)によって作り出され、アニメをシェアする2ちゃんねるというサイトがもとになっている。

 このサイトのスタイルに影響を与えたプールの主たる関心は、「アニメ・死・触手・レイプ・売春宿(Anime Death Tentacle Rape Whorehouse)」として知られる掲示板サイト「サムシング・オーフル」から着想を得ている。

 4chanは2003年の10月に開設され、2011年には、月当たりおよそ7億5000万のページビューを数えるまでになった。新規のユーザーはニュー・ファグ、古参のユーザーはオールド・ファグと呼ばれた。この板はとてつもない影響力をもったクリエイティヴな場として知られるようになり、悪ふざけやミーム、画像など、そこに「見つからないものはない」と言われていた。

 このサイトのカルチャーは、単にディープかつショッキングな仕方でミソジニー(女嫌い)であるのみならず、自らがオタク(ナード)であり、男性アイデンティティの「ベータ版」であるとして嗤う自己卑下的なものでもあった。このカルチャーを示すほかのものとして、戦争を題材にしたゲームや、『ファイト・クラブ』や『マトリックス』のような映画も含まれる。レジストレーションもログインも必要なかったので、ほとんどすべての書き込みは「アノニマス名無し)」というユーザーネームでなされた。

 匿名性のカルチャーは、ユーザーたちが自分たちのもっともダークな思考へと向かう環境を助長した。キモいポルノグラフィー、内輪ネタ、オタクの隠語、血生臭いイメージ、自殺的、殺人的、あるいは近親相姦的な考え、レイシズムやミソジニーは、この奇妙なヴァーチャル空間での実験場によって作られた環境の特徴であるが、大部分のものは人を笑わせる類のものだった。

 プールは4chanのことを「ミーム工場」と呼んでいたし、実際それが数え切れないほどのミームを作り出し、メインストリームのインターネット・カルチャーへと流れ込んでいった。初期のもっとも有名な例は、おそらく「ロルキャット(LOLcat)」だろう。

 猫の画像を用いたイメージ・マクロで、「リックロール」――見た目はまじめなコンテンツへのリンクだが、クリックするとリック・アストリーが歌う「ネヴァー・ゴナ・ギブ・ユー・アップ」のビデオクリップへと移動してしまう仕掛け――がほどこされている。

11歳少女に自殺をそそのかすことも…

 4chan/b/のユーザーは、2008年のタイムズ誌のオンライン投票でクリス・プールを年度代表人物にするような運動を進め、2010年には無作為に選んだ11歳のジェシースローターを選出しようとする集団でのネットいじめをおこなった。ユーザーたちは彼女の名前と住所をつきとめ、嫌がらせをして、彼女がギャングスターラップを真似て喋るふざけた動画を投稿したときに、自殺するようそそのかしたりした。

 彼女の父親が狼狽した娘を守るために動画を投稿し、サイバーポリスを呼ぶと脅しても状況が改善されなかったのは驚くべきことではない。ユーザーたちの感情的な幼稚さに従うなら、ネット・カルチャーの知識が欠落していることは、4chanの上でいかなる残酷な仕打ちを受けても仕方ない、ということになる。

 それほど残酷ではないユーザーたちの集団的ないたずらとしては、「お誕生日作戦(Operation Birthday Boy)」がある。ひとりの年取った男が「人は誕生日パーティーを望んでいた」とインターネット上で告知したときのことだ。孤独な老人の訴えに感銘を受け、ユーザーたちはその男の名前や住所、電話番号を特定し、数百ものバースデイカードを送り、ケーキの注文やストリップ嬢の派遣をしたのである。

 ニューヨークタイムズ誌では、マタシアス・シュワルツ4chan/b/を次のように説明している。

4chanのほかの板――旅行板、フィットネス板、ポルノグラフィー各種の板――にいる匿名の住人たちは、/b/板の住人たちを「豚野郎(/b/tard)」と呼んでいる。邪悪さ、狭量さ、トラフィックの量によって意見を変える点などから考えてみても、/b/板のカルチャーはほとんど前例がない。/b/板の書き込みは、高校のシャワールームの一角のような、猥雑なパーティーラインのような、あるいは投稿されていないが若者言葉すぎて理解できないスラングに満ちたコメントだけがあるブログのようなものだ。〉

レイプや殺人の脅迫も…ネットの世界から「女性排除」を目論む「アメリカの怖い集団」の正体〉へ続く

アンジェラ・ネイグル,大橋 完太郎/Webオリジナル(外部転載))

4chanを立ち上げたクリス・プール氏(画像:本人SNSより)

(出典 news.nicovideo.jp)

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