【社会】「石破首相の商品券」だけじゃない…政治家の間では常識になっている「もち代」「氷代」という”裏金”の悪習
【社会】「石破首相の商品券」だけじゃない…政治家の間では常識になっている「もち代」「氷代」という”裏金”の悪習
■派閥が出す「もち代」「氷代」
政治の世界には、「もち代」「氷代」という、派閥の政治団体が季節ごとにお歳暮・お中元みたいに所属議員にお金を配る風習があることも触れておかねばなりません。もち代は正月だから冬に渡します。氷代は夏に渡します。つまり、夏と冬の年2回、慣例的に派閥が、所属する国会議員の政治団体にお金を寄付するのです。
金額は100万円から400万円程度が相場です。派閥の政治団体の収支報告書を見ると、所属議員の政治団体に寄付・交付金として渡されたことが記載されており、受け取った議員の政治団体も収支報告書に記載することになります。
そして、このもち代・氷代は、派閥からだけでなく、政党から配られることもあります。過去には、幹事長が各議員を呼び出し、直接現金を手渡していましたが、その後、その議員が支部長を務める政党支部などの銀行口座に振り込まれる形になりました(※1)。この場合は、政党から議員の政党支部などに寄付が行われ、寄付した側もされた側も、やはり政治資金収支報告書に記載する義務があります。
■「裏金」化する余地がある
しかし、もち代・氷代が、政党から議員「個人」が受け取る「政策活動費」「組織対策費」とされることもありました(※2)。この場合のもち代・氷代は、支払った政党の政治資金収支報告書には支払い先を記載する義務があり、議員の個人名と金額が記載されます。しかし、受け取った議員個人は、自身の政治団体で受け取ったわけではないですから、収支報告書への記載義務はなく、使途を明かす必要もありません。
もち代・氷代は、国会議員が地元の県議や市議との関係を強化するために配るという慣習も存在します(※3)。この場合は、それぞれの政治団体同士のお金のやり取りとなれば、政治資金収支報告書に記載されます。このお金が買収だったとされ、議員が逮捕される事件も過去にありました。しかし、政党から国会議員に配られた、使途を明かされない政策活動費がそのまま流用される際は、国会議員、県会議員両者の政治団体の収支報告書に記載されない「裏金」になることがあります。
■政治家の給与明細に載らない「政策活動費」「組織対策費」
政治家個人に対する寄付については厳しく制限されているものの、例外的に「選挙運動」に関するものと、政策活動費、組織対策費などと称する政党による寄付は認められていました。
この政策活動費は政党・政党支部から政治家個人に渡すお金で、その使途は公開する義務がありません。そのため、政策活動費はブラックボックスといわれてきました。さらに、政策活動費は非課税の扱いになっているのです。もちろん、政治家の給与明細にも載りません。
やっかいなのは、政党から、党の幹事長など要職を務める政治家に政策活動費が支払われたら、その政治家の名前は政党の収支報告書に載るのですが、その政治家が受け取った政策活動費を何に使ったかの報告をしなくてもいいことになっていることです。
たとえば、その有力政治家から、そのお金をもち代・氷代として党の所属議員個人に手渡す。その際、幹事長であれば、派閥の長にまとめて一義的に渡してから、さらに派閥の議員たちに、個別に手渡す場合もあるでしょう。過去には、議員が海外視察に出かけるときにも、幹事長から「餞別」と称して、政策活動費を渡すという慣習がありました(※4)。これらのお金は、どの収支報告書にも記載されないものになるのです。
政策活動費の大半は、幹事長に渡されてきました。自民党の幹事長には毎年数億円から10億円程度が支給されてきたのです。このお金を自由に差配できることが、幹事長の政治力の源泉になってきました。
■政治資金パーティーでお金を集める政治家たち
政治家たちは、政治資金規正法で認められている政治資金パーティーを開催して、政治資金を集めることもあります。
政治資金パーティーとは、政治家の資金管理団体や後援会といった政治団体、支部長を務める政党支部が主催し、支援者などを会場に集めて講演などを実施、その後に懇談会と称して飲食するイベントです。たいていの政治資金パーティーは参加費2万円の設定ですが、近年は不景気という社会的環境もあって参加費1万円の政治資金パーティーも増えています。
政治資金パーティーで、政治家はどうやって政治資金を稼いでいるのか。それは、パーティー券の代金と提供される飲食費の差額によって利益を得ています。たとえば、1枚2万円のパーティー券を販売して、実際のパーティーで1人あたり5000円分の経費を使うとします。これだと、1枚パーティー券を販売して粗利(あらり)は1万5000円。100人参加のパーティーなら、150万円の利益になります。
場所代や提供される料理代を節約すれば、粗利はもっと増えます。しかし、場所が会議室で、提供される料理がショボすぎると「ケチな政治家」との印象を残し、「あの人に何かを頼んでも、大したメリットはなさそうだ」と支持を失い、逆効果になることも。こうした利益と支持拡大とのバランスを見ながらパーティーを差配するのは、熟練秘書の仕事とされています。
■1000万円を超えるお金を集める「特定政治資金パーティー」
政治資金規正法で認められた政治資金パーティーのうち、その対価にかかる収入が1回1000万円以上の政治資金パーティーを「特定パーティー」と呼びます。特定パーティーを開催するためには、まず大規模な会場を押さえなければなりませんが、そこに参加してもらうためには政治家個人の知名度などが重要です。
そのため、特定パーティーを開催できるのは現職の総理大臣や閣僚、幹事長といった大物政治家がほとんどです。共同通信によれば、2022年に開催された特定パーティーの収入は合計52億円に達し、その9割が与党である自民党議員によるものでした(※5)。
たとえば、当時首相だった岸田文雄氏の場合、2022年4月27日、東京のANAインターコンチネンタルホテル東京で開かれた「第40回衆議院議員岸田文雄と国政を語る会」では、1000者からお金を集め、3312万円の収入を得ています(※6)。
さらに、1回で1億円以上を稼ぎ出す派閥主催の特定パーティーもあります。たとえば、自民党の二階派といわれた派閥「志帥会」の場合、2022年5月16日、東京のホテルニューオータニで開かれた「志帥会と同志の集い」では、7538者からお金を集め、2億1209万円の収入を得ています(※7)。
■集めたカネを「相続税ゼロ」で相続できる“裏技”もある
政治家が持つ政治団体は、多くの収入がある一方で、それらはあくまで政治資金ですから、所得税が課税されません。また、政治団体の名義変更をすることで、相続税や贈与税を課税されることなく、息子や娘などへと政治資金を引き継ぐこともできます。莫大な資金がプールされている政治団体を親から引き継げば、1年目の新人議員でも選挙戦を有利に戦うことができ、政治活動で金策に困ることもありません。
こうした政治団体を利用した資産の継承は横行しており、政界では世襲議員が選挙戦などで圧倒的有利になっているのが現状です。この優遇策が2世・3世議員が増える大きな要因になっています。
2022年に死去した故・安倍晋三元首相の政治団体「晋和会」と代表を務める「自民党山口県第四選挙区支部」は、没後に妻の昭恵氏が引き継ぎました。これが非課税で継承されたことで、大きな注目を集めました(※8)。その後、この晋和会に、先の政党支部を含む安倍晋三氏の5つの関係政治団体から計2億1470万円が寄付されていたことが、公表された政治資金収支報告書などから発覚します(※9)。昭恵氏は議員だった過去はありません。さらに、2024年10月現在、政界進出の話も出ていません。
晋和会はもともとは安倍晋三元首相の父である故・安倍晋太郎議員が設立した政治団体(緑晋会)でした。つまり、3代にわたって引き継がれてきたのです。
野党第1党の立憲民主党は、世襲政治からの脱却を掲げて政治団体を配偶者や3親等以内の親族が引き継ぐことを禁止する法案を検討し、2023年に国会議員が3親等以内の親族にみずからの関係政治団体を引き継ぐことを禁じる法案を提出しています。一時期は、与党である自民党も、政治団体を親族間で引き継ぐことを禁止した内規を検討したこともありましたが、今後、この優遇策が変わるかどうかを、国民は注意して見ていく必要があります。
※1 日本共産党・前衆議院議員 佐々木憲昭 2005年2月4日【政治経済キーワード】もち代・氷代
※2 読売新聞オンライン2023年12月30日「『派閥から還流なのに「党からの金」は無理』…議員の『政策活動費』主張に疑念深まる」
※3 中国新聞デジタル2023年5月26日「氷代・餅代『もらうときは、いつも2人きり』被買収の石橋竜史広島市議第2回公判詳報」
※4 東京新聞TOKYO Web2021年9月11日「巨額の政策活動費どう使った?元幹事長が語る自民党、旧民主党の実態」
※5 日本経済新聞(ウェブ)2023年12月1日「特定パーティー収入52億円22年政治資金報告」
※6 新政治経済研究会 政治資金収支報告書(令和5年4月26日)
※7 志帥会 政治資金収支報告書(令和5年2月6日 令和6年1月18日経緯追記)
※8 しんぶん赤旗(ウェブ)2023年6月28日「安倍元首相の政治団体妻昭恵氏が継承残された政治資金どこへ私人が非課税で引き継ぎ可能」
※9 朝日新聞デジタル2023年12月2日「安倍氏の関係政治団体、昭恵氏が継いだ『晋和会』に2億円超寄付」
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ジャーナリスト
1994年京都大学を卒業し朝日新聞に入社。政治記者として菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝らを担当。政治部や特別報道部でデスクを歴任。数多くの調査報道を指揮し、福島原発の「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。2021年5月に49歳で新聞社を退社し、ウェブメディア『SAMEJIMA TIMES』創刊。2022年5月、福島原発事故「吉田調書報道」取り消し事件で巨大新聞社中枢が崩壊する過程を克明に描いた『朝日新聞政治部』(講談社)を上梓。YouTubeで政治解説も配信している。
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