【国際】「最高月収は32万円」“路上で人を褒める”パフォーマンスを始めたら収入激変…元ホームレス男性(43歳)がたどり着いた「意外な天職」の正体

【国際】「最高月収は32万円」“路上で人を褒める”パフォーマンスを始めたら収入激変…元ホームレス男性(43歳)がたどり着いた「意外な天職」の正体

この話は、どんな状況からでも人生を変えられるという希望を与えてくれます。路上でのパフォーマンスが収入に直結するとは驚きですが、人を褒めることがもたらす心のつながりが大事だと教えてくれました。このように他人に喜びを与える行為が自分自身の幸福にもつながることを考えさせられます。

「最高月収は32万円ですね。いちばん売り上げが少なかったのは渋谷の夜、2時間で1組しか来なくて、70円という日がありました」――写真の男性の仕事は、ただひたすらに「人を褒める」こと。

 2021年12月から「褒めますおじさん」として活動する43歳の彼はいかにして今の仕事にたどり着いたのか? 気になる収入事情、そして仕事の喜び、苦労などをインタビュー前編では伺った。(全2回の1回目/後編を読む)

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実はギャンブル好き…ホームレスだった時期も

――路上に立つまでは、どういう生活を?

褒めますおじさん 高校卒業後は家を出て、職を転々と。でも親父が脳梗塞になったので、一旦栃木の実家に戻りました。

 親父はひとり暮らし。さすがに放ってはおけないので、一緒に暮らしていたんですけど、家のローンが払えずに差押えられ、2021年3月に強制退去。僕はホームレスになり、老人ホームに預けた親父は、今年に入ってすぐに亡くなりました。

――ローンが厳しかったんですね。

褒めますおじさん 僕はギャンブルが大好きで……。19歳からパチンコを始め、競輪にハマりました。お金があれば10円玉まで使っちゃう。金融機関はもちろん、いろんな方からお金を借りて、スッてはつぎ込みを繰り返し、最終的に借金は500万~600万円にもなってしまって。

――路上でパフォーマンスを始めたのは、その年ですか?

褒めますおじさん そうです。しばらくは失業保険を使い、ネットカフェサウナに寝泊まりしていましたが、お金はどんどん減っていく。そこで路上パフォーマンスをしようと思いつきました。

――路上に立とうと思ったきっかけは何ですか。

「褒めますおじさん」を始めた理由

褒めますおじさん 以前から路上のパフォーマンスを見るのが好きで、ぼんやりと憧れがあったんです。自分のしたいことを自由に表現できて、見てもらえるのっていいなと。家もなくなったし、どうせならしたいことをやってみようと思って。

――ただ、好きなタイミングで披露できるダンスや歌と違って、“褒める”のは、人からお願いされないとできないことですよね。

褒めますおじさん 自分にできて、人が喜んでくれることは何かを考えた時、パッと思いついたのが“褒める”だっただけなんです。歌や楽器だと、うまくないとお金がもらえない。でも、褒められてイヤな気持ちになる人は少ないでしょ。人がお金を払うのは、いい気持ちになったときだという目論見もありました。

――褒めるにあたり、練習はしたんですか?

褒めますおじさん 練習、しました。ブックオフで買った『大人のほめ言葉』という本を読み込んで、シミュレーションして。本のなかで印象的だったのは、話を聞くことも相手の自己肯定感を高めるという部分ですね。

――2021年の12月30日に始めた理由は?

褒めますおじさん その日、所持金が600円になって、カップラーメンを食べたらカツカツ。寝る場所もなく、ついに限界になったので、その時いた町田の駅前で立つことにしたんです。

――どのぐらいの時間立って、いくら稼げたんですか。

褒めますおじさん 夜の9時ぐらいから朝の3~4時までで、4400円でした。実は最初は立ってなくて、体育座りだったんです。これまでの仕事は鉄工所とか解体屋とか、1人で黙々とやるものが多かったし、恥ずかしくてフードを被って。

 こんなことで本当にお金を稼げるのか不安もありましたが、30分ぐらいして、初めてのお客さんが来てくれたときはほっとしました。でも冬だしお尻が冷たくて、立ってた方がまだまし(笑)。お客さんが来てくれたことも自信になって、立つタイミングでフードも取りました。

――初日の収入は4400円。順調な滑り出しでしたか?

褒めますおじさん 2日目は大晦日だったので、川崎に行きました。川崎大師があるから、初詣に行く人で賑わうかなと。

――戦略的なんですね。

褒めますおじさん 本当に人が多くて、2万円ぐらい稼げました。その時に、「いけるかな」という手応えも感じて。この経験で、地元のお祭り花火大会など、人が集まるイベントをチェックするようになりましたね。“屋台”を出す感覚です。

――報酬は、あくまでもお客さん次第ですよね。現在の平均収入は?

「最高月収は32万円」だが…

褒めますおじさん 正直払わない人もいますが、最高3万円入れてくれた人が2人います。大体毎日路上に立って、1か月平均で20万~30万円。少ない月でも15万円前後はあります。

――これまで、もっとも稼いだ日と最高月収はそれぞれどのぐらいですか。

褒めますおじさん 1日だと、最高4万3000円です。最高月収は32万円ですね。

 ちなみにいちばん売り上げが少なかったのは渋谷の夜、2時間で1組しか来なくて、70円という日がありました。渋谷は波が激しく、人が多い割にはスルーということも多い。ただいちばんお客さんが来たのも渋谷で、2、3年前のハロウィンの時は70人ぐらい褒めて、収入は8000円ちょっとでした。

初対面の人を褒めるコツとは?

――初対面の相手をいきなり褒めるのって、難しくないんですか。

褒めますおじさん 一瞬で僕がその人の人となりをわかるわけはないと割り切っています。中途半端に中身に触れてもウソくさくなるので、パッと見た印象から入って、その後ほかの褒めポイントが引き出せればいいなという感覚ですね。

 どんな人でも、褒めポイントはあるものです。「全然違う」とか「別に嬉しくない」と言われることもありますけど、それはもうしょうがない。

――勢いのある喋り方で、めちゃくちゃ褒めてくれるとして人気です。

褒めますおじさん 看板に“すごく”褒めますってつけちゃったんで(笑)。ただ大げさに演出することで、エンタメになったらいいなという思いがあります。

 褒めますパフォーマンスは、基本的に“待ち”。看板だけで自分が何をやる人かを伝えつつ、寄ってきてもらえるようにしないといけません。そう考えた時に、普通の褒めますよりも“すごく”のほうがインパクトがあって、気になってもらえるかなと。

――お金を稼げるようになって、生活は変わりましたか?

褒めますおじさん 毎日カップラーメンだった食生活が、時々吉野家に行けるようになりました。あとは替えの洋服を買ったので、ちょっと小綺麗になったかな。それまで洋服は1着しか持ってなくて、ホテルで夜洗って翌日着る、という生活だったんです。

 今は47都道府県回ることを目標にしていて、ほとんど交通費と宿泊費に消えますね。極力高速バス青春18きっぷのようなお得なチケットをやりくりして、31都道府県をクリアしたところです。

――最近は宿泊料金が高くなっているのでは。

褒めますおじさん 本当にそうなんです。東横インが好きでしたが、昔は5000~6000円だったのに今や7000~8000円もする。しかもインバウンドで予約も取りづらくなりました。泊まるところがなく、その辺の駅とかで過ごしたこともあります。

 ただホテル代だけで月に15万円ほどかかることを考えると、家賃5、6万円ぐらいのところに住んだほうがいいなとは思っていて、47都道府県を制覇したら、いずれ部屋は借りるつもりです。ネットカフェも値段が上がってきていますし。

一番苦戦したエリアは「大阪」

――土地によって「お客さんのタイプ」も違うものですか?

褒めますおじさん 大阪は厳しいっすね。近寄ってもくれない(笑)。反対に東北地方、仙台なんかはみんなあたたかい感じでしたね。過疎を感じたのは徳島でした。街に人がいなくて、立っていても誰も通らなくて……。反対に熊本は半導体バブルらしく、人がたくさんいて賑わっていました。

――寒いとか暑いとか、季節も大変そうです。

褒めますおじさん 暑さはなんとかなるんですけど、一昨年(2022年)、北海道に11月頃行っちゃった時は大変でした。大雪が降るマイナス5度ぐらいのススキノで、来てほしいな、来てほしいなと思いながら、無の状態で立っていました。急に思い立つタイプで、しかも“今しかない”と思ってしまう。これはもう性分ですね。

投げ銭を入れるフリをして“お金を盗むヤカラ”も…褒めますおじさん(43歳)が見たヤバい客・素敵な客・意外な客「小学生から貰った手紙は僕の宝物です」〉へ続く

(吉河 未布)

いかにして「褒めますおじさん」という天職を見つけたのか―― ©細田忠/文藝春秋

(出典 news.nicovideo.jp)

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