【社会】「京都大学の給料では京都市内に住めない!」は本当か…? 日本人が知らない「大学教員の給与事情」

【社会】「京都大学の給料では京都市内に住めない!」は本当か…? 日本人が知らない「大学教員の給与事情」

この記事では、京都大学の給料について具体的に掘り下げています。実際の生活費や家賃に対する教員の給与を考慮すると、その生活を続けるのが難しい現実が見えてきます。そのため、大学教員の仕事は単に学問を追求するだけでなく、経済的な考慮も必要であることが示されています。

 特定の大学に早い段階で就職した准教授が、新たにやってきた教授よりも高い給料をもらっているという不思議な事象も…。日本人が知らない「大学の先生たちの給与事情」を紹介。約30年、国立大学で働き続け、多数の著作を執筆してきた神戸大大学院教授・木村幹氏の新刊『国立大学教授のお仕事――とある部局長のホンネ』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

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京都大学の給料では京都市内に住めない!」。悲鳴のような声がSNSに書かれていて驚いた。京都大学とはいうまでもなく、東京大学と並ぶ、日本の最名門大学の一つであり、多くのノーベル賞受賞者をも輩出している大学でもある。その京都大学の教員が、京都市内に住めない、などということがあるだろうか。

大学の先生たちの給与事情

 それでは、今日大学の給料はどのくらいなのだろうか。実は、国立大学教員の給与の在り方については、俸給表が一般に公開されているので、簡単に調べることができる。たとえばこの点についての京都大学の情報公開用のウェブサイトを見ると、一般職俸給表(一)から指定職俸給表まで七つの俸給表が並んでいる。大学教員に適用されるのは、このうちの「教育職俸給表」の金額になる。そこには月額の俸給が掲載されており、最低額が一級一号俸の19万900円、逆に最高額が五級二三号俸の57万3200円になっていることがわかる。

 仮に2024年の公務員に対する年間ボーナス支給分が、この大学でも与えられるとすれば、最低年収は316万8940円、逆に最高年収は951万5120円、だということになる。この上に通勤手当や家賃手当、扶養手当、都市手当等もろもろがついてくるので、大学から供与される全体額は役職等がなければ、もっとも低い人で年間350万円程度、多い人で1000万円を少し超える程度という計算になる。

 京都市内でも、一家族が住めるだけの住環境を用意しようとすれば、10万円以上の家賃が必要になるだろうから、収入が350万円程度であれば、残る金額で家族を養うことはなかなか大変だ。他方、1000万円前後の収入を得ている人にとっては、その家賃負担は大きなものではないだろう。

 ちなみに学長や理事は、会社でいえば会長や取締役に当たる役職であるので、この俸給表の枠外で報酬が決まっている。京都大学の例であれば、現在は総長が120万3000円、理事が70万8000円から89万8000円の範囲内で総長が定める額、監事が70万8000円の俸給月額になっている。

勤続年数が長いほど給与は上がるが…

 これらを一見してわかるように、大学教員の給与は、同じ大学であっても職階や勤続年数によってさまざまであり、どの部分を切り取るかにより、給与が高いか否かは大きく変わってくる。とりわけ重要なのは勤続年数であり、同じ大学に長く勤務していれば、給与は次第に上がるので、特定の大学に早い段階で就職した准教授が、新たにやってきた教授よりも高い給料をもらっている、などという事態も生じる。

 最近では「年俸制」に移行する大学も多く、筆者の大学でも一部の教員に採用されている。ちなみに一口に年俸制といっても、そのやり方は毎年の業績により大きく報酬が変化するものから、俸給表による給与相当額を、年俸として形式的に受けとるものに至るまでさまざまである。

 また、日本人の平均年収は2022年段階で男性が563万円、女性が314万円、さらに言えば年収の中央値は396万円だから、大学教員の給与がことさらに安いとはいえないだろう。ちなみに2004年の国立大学法人化以前は、等しく文部科学省に所属する国家公務員であったこともあり、国立大学教員の給与は今でも大学が変わっても大きくは変わらない。だから、そろそろ年齢が60代に差しかかろうとする筆者も、京都大学における「高いほうの事例」に近い給料をもらっているので、この点については贅沢は言えない。

 だが大学にはこのような「教育俸給表」に沿って給料が支払われる人々のみがいるわけではない。たとえば、非常勤講師は半期2単位、15回の授業を担当しても、せいぜい得られる報酬は20万円弱にしかすぎない。外部資金で雇用される教員たちの給与は、大学の規定ではなく、外部資金側のルールにより決まってくるので、通常、俸給表に沿って給料が与えられる人々よりも低い金額になる例も出る。 給与を「時間給」で与えられている例もあり、この場合には年間の所得は300万円台を切ることもある。何よりもある程度給与が与えられても、「テニュア」が確保できなければ、任期が切れればたちまち無職になる。こうしてみると、大学教員のお金を巡る問題のかなりの部分は、テニュアを得るまでの若い人たちと、安定した立場にいる人たちとの間の格差にあるといえそうだ。

昼間から「優雅なフレンチ」を堪能できる大学も…意外と知らない「大学教員たちのご飯事情」〉へ続く

(木村 幹/Webオリジナル(外部転載))

大学の先生たちはいくら貰っているのか? 京都に住むのは難しいのか? 写真はイメージ ©getty

(出典 news.nicovideo.jp)

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