【社会】「ネズミ混入」すき家は“売上高2割減”の厳しい状況に。「負のイメージ」払拭に策はあるのか

【社会】「ネズミ混入」すき家は“売上高2割減”の厳しい状況に。「負のイメージ」払拭に策はあるのか

すき家が直面しているネズミ混入問題は、飲食業界全体に大きな影響を与える教訓です。清潔さや安全性が求められる中、企業は顧客の信頼を取り戻すためにどのような対策を講じるのか、注目が集まります。売上が2割減という厳しい現実を踏まえ、今後の戦略が気になります。

外食売上1位を誇り、拡大路線を推し進める巨大外食企業のゼンショー

規模の経済とグループシナジーを発揮し、更なる成長を目指していたが、コア事業である「すき家」で異物(ネズミ)混入が発生し、対応の遅れと共に批判が巻き起こった。SNSや報道で過剰に取り上げられた影響は、現在まで続いている。

異物混入問題でのすき家の対応は

すき家は自らが公表する前に噂が広まり、忸怩たる思いを抱えたのではないだろうか。

急遽ホームページ等で謝罪と今後の対策を発表したものの、異物が混入した画像が拡散され、その衝撃的な絵面が店舗イメージを大きく低下させたのは確実だ。また、別店舗で害虫混入が発覚したことでさらに事態を悪化させてしまった。

異物混入は他業態でも発生しており、衛生管理体制への批判が強まっている。客足の回復には時間を要する見通しだ。

実際の発生確率は低いものの、店舗数が多く、有名企業であるため誇張されやすい傾向がある。すき家は緊急対策として体制の整備と衛生管理の徹底を目的に、3月31日から4月4日まで店舗を閉鎖した。

期間中は人件費などの経費が発生するため損失も大きい。しかし目先の利益よりも将来の利益を重視した英断であり、いずれ評価されるはずだ。社長も創業者である小川賢太郎氏から次男で副社長の小川洋平氏に承継すると発表したことからも、将来に目を向けて動いていることがわかる。

さらに、営業再開後も一部店舗を除く全店舗で、毎日午前3時から午前4時の間に営業を休止し、集中的な清掃作業を行うほか、同グループの「なか卯」でも清掃タイムを設けるなど、ゼンショー全体で顧客の信頼回復に向けて努力を続けている。

◆業績への影響は色濃い

今回の対応は、全店舗が直営店であるため可能だった。しかし、売上構成比で26.2%、営業利益で34.8%を占めるコア事業、すき家の4日間の閉店は、業績に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。

月次情報によると、25年3月期(通期:24年4月~25年3月、既存店ベース)は売上110.5%、客数102.5%、客単価107.8%と順調に伸びていた。

しかし、3月22日に公表された異物混入騒動の影響は今期(26年3月期)以降に反映されるだろう。

4月度の速報値では既存店ベースの前年比が売上92.8%、客数84.0%、客単価110.5%と、売上が7.2%減少している。

これは客数が16%も著しく低下したことによるものであり、客単価の10.5%上昇が売上低下を若干抑えているが、厳しい状況が予測される。ちなみに全店売上は前年比で79.8%と大きな落ち込みを見せている。

◆M&Aで拡大を続けてきたゼンショ

ゼンショーは今年で創業43年目を迎える外食最大手企業だ。

不足する業態は自ら開発するのではなく、M&Aによって傘下に収めることで適切なポートフォリオを構築。

グループ全体での統一的なマネジメントにより、全体最適化を図っている。店舗数は国内外で15,419店舗(FC8,559店舗を含む※25年3月末時点)に達しており、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」を企業理念として掲げ、グループ全体を統率している。

ゼンショーの中核事業は「すき家」であり、グローバルすき家、グローバルはま寿司、グローバルファストフード、レストランの4事業が主力。それぞれが競い合いながらシナジー効果を発揮している。

◆25年3月期の連結決算では売上が1兆円台に到達

25年3月期の連結決算は、売上1兆1,366億8400万円(前年同期比+17.7%)、営業利益751億2800万円(同+39.9%)と、売上はついに1兆円の大台に乗せるなど、著しい伸長度を見せている。

営業利益率も前期5.6%→今期6.6%と上げており、経営効率性の指標であるROE(自己資本当期利益率)も前期14.3%→今期17.3%と効率を高めている。

経営の安定性の指標である自己資本比率も前期28.7%→今期29.5%になり、財務基盤を若干ではあるが安定させた状態だ。

多業態展開によるリスク分散とリターンの多様化を実現させたコングロマリット状態だから、どうしても利益率は低くなりがちだが、他人資本を最大限に活用しながら、株主資本を効果的に活用して利潤最大化を追求している。

低めの自己資本比率は、財務安定性への不安を感じるが、株主が求める効率経営は実現できているようだ。

しかし、今回の件の影響が長引き、グループ全体に負の波及効果が生じる可能性があることは否めない。この場合、財務の脆弱性が諸刃の剣となる危険性があるため、その点の対策は急務といえる。

ゼンショーはどう信頼を回復していくべきか

外食最大手になったゼンショーだが、かつても店舗数を拡大する過程で様々な問題が発生した。

それらの課題を解決する度に学習しながら成長する組織と進化し、今や盤石な事業基盤を確立しているはずだが、今回の事案は想定を上回る複雑性も重なったのだと思う。

すき家は店舗数が多いだけに多くの従業員を雇用するが、現役や元従業員によって“裏側”をSNS上でも晒され、店舗イメージが低下してしまった。

悪い情報は瞬時に拡散される今の時代において、多くの店舗を有する外食チェーンの怖さを感じたもので、“明日は我が身”と警戒する他チェーンも多いだろう。衛生管理の徹底と、入れ替わりの激しい従業員の口には注意しないといけない。

私達にとって、身近に多くの店舗があり、牛丼を中心に美味しい商品を手軽な価格で提供しているすき家の存在は大きい。

負のイメージを払拭させるには、もう少し時間を要するだろうが、今は耐えながら信頼回復の対策を講じるしかないようだ。一日も早く元の状態に戻ることを期待したい。

<文/中村清志>

【中村清志】
飲食店支援専門の中小企業診断士行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan

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(出典 news.nicovideo.jp)

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