【社会】「ケーキ切れなそう」が悪口になっている今『ケーキの切れない非行少年たち』著者が知っておいてほしいこと
【社会】「ケーキ切れなそう」が悪口になっている今『ケーキの切れない非行少年たち』著者が知っておいてほしいこと
この言葉は手先の器用さや、ナイフの使い方に関するものではない。
「ケーキ切れなそう」というのは、あまり頭が良くない、という意味。つまり一種の悪口である。
「語源」は、宮口幸治・立命館大学教授の著書『ケーキの切れない非行少年たち』。
宮口氏が児童精神科医として医療少年院に勤務した時の経験をベースに書かれた同書はコミック化もされ、シリーズ累計で180万部のベストセラーとなっている。
宮口氏が同書で明らかにした「ケーキの切れない非行少年」の存在は、これまであまり語られてこなかった「境界知能」という問題を世に多く広めることにつながった。
ケーキを切れないとはどういうことか。彼らはどうして非行少年となるのか。
同書をもとに見たうえで、宮口氏の「ケーキ切れそう」に関する見解も聞いてみよう。
●医療少年院の子どもたち
宮口氏は2009年から法務省矯正局の職員となり、医療少年院に6年間勤務、その後、女子少年院に1年余り、法務技官として勤務。医療少年院とは現在も関りを持ち続けている。
【中略】
少年院在院少年たちの幼少期からの調書を読んでみると、彼らは少年院に入るまでに、これでもか、これでもかというくらい非行を繰り返しています。少年院に赴任したての頃は、凶暴な連中ばかりでいきなり殴られるのではないか、といつも身構えていました。しかし、実際は人懐っこくて、どうしてこんな子が? と思える子もいました。
しかし一番ショックだったのが、
・簡単な足し算や引き算ができない
・漢字が読めない
・簡単な図形を写せない
・短い文章すら復唱できない
【中略】
●著者は「彼らのことを知ってほしい」
読めば分かる通り、宮口氏は彼ら少年たちを否定するためにこうした事実を明らかにしているのではない。
その存在を認めたうえで、彼らに合った支援をすること、そうした支援への理解を求めるためである。それは決して彼らを甘や*ことではなく、社会全体の利益になるのは言うまでもない。
「ケーキ切れなそう」がスラングとして流通していることについて、改めて宮口氏の見解を聞いてみた。
「ケーキの切れない非行少年たちとは、すなわち知的障害や境界知能といった問題を抱えている少年のことです。そうした子どもがかなりの数いることが広まることは、悪いことだとは思いません。
ただ、それを知った方には、バカにしたり、敬遠するのではなく、彼らを社会としてどのように受け止め、支援するのかといった視点を抱いていただきたいと思います。
ブックバン 2025/05/29
https://www.bookbang.jp/article/800111