【社会】「都道府県人口減の未来図」――2024年都道府県20代人口流出率ランキング

【社会】「都道府県人口減の未来図」――2024年都道府県20代人口流出率ランキング

2024年の20代人口流出率ランキングを見て驚きました。これからの街づくりや地域振興において、若者を引き寄せる施策が求められています。

2024年、社会減に転じた道府県は40に拡大し、その大半が未婚の20代女性を失いつつあるのが現状です。地方創生を掲げながらも若年女性を引き留められない現状をどう変えるべきなのでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏が、自治体と企業が取り組むべき女性社会減対策について詳しく分析、解説します。

「就職による社会減」に向き合えるかが鍵

40道府県が社会減

総務省「住民基本台帳人口移動報告」2024年年報を分析すると、47都道府県中40道府県で社会減(転入数―転出数<0、国内人口移動による人口減)が発生した。社会増となったのは、1都3県、山梨県大阪府福岡県である。ちなみに2023年も7都府県が社会増で、山梨県滋賀県に入れ替わっているが、両者ともに非常に小規模な数十人の社会増であるため、社会増としてポジティブ評価にまでは至らない。

そして、2024年に社会減となってしまったこの40道府県の社会減の詳細を男女別、5歳年齢階級でみてみると、前年と変わらず、20代前半人口を大きく社会減させてしまっている(図表1)。

この年齢層の社会減は22歳(4年制大卒)が圧倒的に多く、23歳(1浪1留など)、20歳(専門卒)などが続き、就職による転居であることが読み取れる(ちなみに4月入社を前にした、3月の住民票移動が圧倒的となっている)。

また、図表1の通り、20代前半人口は男性よりも女性の方がかなり多く社会減している状態にある。しかし、これを「意外」と考える人は少なくないだろう。転入数、転出数の片道でみると男性の方が多いため、「自分の同級生で考えると、男性の方が就職で県外に出た気がする」からである。しかし、男性の方は地元から出ていく数が多いものの、地元に入ってくる数も多いため、差し引きでは女性ほど減少しない。一方、女性は男性よりは地元から出ていかないが、あまり入っても(戻っても)来ないために、差し引きで男性よりも女性の方が多く純減しているのである。

20代女性人口を失うことは「エリア人口の未来」を失うこと

男女別、5歳階級別に社会減を精査すると、社会減エリアは「人口戦略的に考えて最も失ってはいけない人口」をメインに手放し続けている。

20代前半女性は国勢調査で9割以上が未婚者である。この結婚前の20代女性をエリア外に失うことは、統計的に見てそのエリアの婚姻数の未来、そして出生数の未来を失うことと同義である。人口戦略としてみるならば、20代男性よりも20代女性を就職期に大量に失う現状は、致命的な事象ということに気づきたい。

そこで、47都道府県が2023年(10月1日時点)の人口推計でみた前年の20代人口のうち、2024年の社会減でどの程度を失ったのか、ランキング形式で示してみたい(図表2)。

男女計でみると、20代人口が社会減となったのは42エリアとなり、都道府県総人口でみる社会減エリア数40エリアよりも2エリア増加した。

この42エリアのうち、四捨五入で20代男女社会減が4%となったのは、高知県青森県奈良県の3県となった。また、3%流出となった府県は、社会減エリア42エリアの約半数の19県にも達している。

しかしこれを男女別でみてみると、社会減エリアがいかに20代男性よりも20代女性定着に弱みを持っているかが明確となっている。男性では、四捨五入で4%減少したエリアが奈良県だけにとどまっており、3%減少したエリアは15県となっている。ところが、女性で見ると、4%社会減したエリアが9県となり、3%のエリアは17県となっている(図表3)。

図表2ならびに3からは、20代男性より多くの20代女性を失っているエリアという特徴が社会減エリアにあることが一目でわかるだろう。

四捨五入で3%以上20代女性流出の26エリアにおいて、2023年における対前年20代人口流出率の値よりもやや改善傾向となったのは、徳島県長崎県福井県鳥取県山梨県広島県のわずか6エリアにとどまり、20エリアは悪化(または不変)となった。20代女性人口の流出が止まらず、かつ、その規模が徐々に拡大している状態に陥っているのである。

わずか3%とはいっても、若年女性の結婚意欲が84%※1、初婚同士夫婦のもつ最終的な子どもの数が1.9※2とするならば、地元の20代女性人口の5%分の出生数を毎年失っていることになる。一例を挙げると、

高知県・20代女性社会減率1位】 2024年1年あたり、▲1073×0.84×1.9=▲1712人(端数切捨て)の出生機会の損失 (高知県の2023年の出生数は3380人) 【新潟・政令指定都市をもつエリアで20代女性社会減率1位】 2024年1年あたり、▲2507×0.84×1.9=▲4001人(端数切捨て)の出生機会の損失 (新潟県の2023年の出生数は10916人)

となり、いかに20代女性の就職期流出が人口問題を深刻にしているかわかるだろう。

以上から、地方創生(社会減抑制)、そして地方の少子化対策(自然減抑制)を目指すならば、このどちらに関しても「女性社会減対策、つまり20代女性に就職で選ばれる地を目指す」という人口戦略に、社会減エリアの首長や企業が真正面から向き合えるか、に尽きるのである。

※1 第16回出生動向基本調査 ※2 第16回出生動向基本調査に掲載の完結出生児数

女性の雇用問題は「人口問題」である

図表2からは、政令指定都市を持つような大都市圏であっても、20代男女の就職期流出の波に飲み込まれている、という実態が浮かび上がっている。

2019年から社会減を続けている3大都市圏中京圏の中核エリアとなる愛知県や、九州全域や山口県から若者を集めて「若者のメッカ」という一般イメージが固定化している福岡県でさえも、20代男女の人口動態でみるならば、社会減エリアとなっている。

20代人口男女合計の社会減よりもより深刻な、20代女性社会減から逃れられているのは、わずか5都府県である。女性活躍推進法行動計画提出企業の2割以上を占め、女性活躍推進において国の認定の「えるぼし」を取得する企業全体の5割※3を占める東京都が傑出して20代女性に選ばれており(4.7%増)、大阪府(1.8%)、神奈川県(1.7%)、埼玉県(0.9%)、千葉県(0.8%)が続く。

「雨だれ石を穿つ」どころではない出生機会損失を地元からの主に就職期の20代前半女性流出によって生み出しているにも関わらず、地方創生(≒地方少子化対策)ではいまだに、「観光※4」「男性ばかりを主に集める工場建設」「少子化で子どもの奪い合いレッドオーシャン状態にある学校建設」「未婚化で激減する母子の奪い合いレッドオーシャン状態をうむ子育て支援合戦」「日本の若者でさえ逃げ出す状況を棚上げした移民誘致」と、まるで戦後まもない時代に思いついたかのような非エビデンス人口戦略ばかりが押し出されている。

令和は情動議論の時代からEBPM(エビデンスに基づく政策策定)の時代へと変わらねばならない。

エリアの人口戦略の在り方を選択するのは、あくまでもその自治体と自治体で活動する経営者ではあるが、地元の未来を願うのであれば、「消滅可能性『地元』の未来を切り開くための覚悟」を持って、雇用問題に向き合ってほしい。

※3 厚生労働省ホームページ「女性活躍推進法に係る一般事業主行動計画策定届出状況」24年9月末状況; ※4 観光はエンターテーメントである。エンターテーメントはそれに費やす経済力があって初めてお金が落ちる業種である。堅固な労働市場が地元にあって初めて、その下流に発生・持続可能な事業であることを忘れないようにしたい。

(写真はイメージです/PIXTA)

(出典 news.nicovideo.jp)

続きを読む

続きを見る(外部サイト)