【国際】日本人の歯みがきは間違っている…”虫歯知らず”のスウェーデン人がやっている”本当の虫歯予防”の中身

【国際】日本人の歯みがきは間違っている…”虫歯知らず”のスウェーデン人がやっている”本当の虫歯予防”の中身

スウェーデン人の虫歯予防法を知って驚きました!彼らの生活習慣や食事、歯みがき方法がどれほど効果的かを理解することで、日本も見習うべき点がたくさんあると感じます。

歯の健康を保ち続けるにはどうすればいいのか。歯科医の前田一義さんは「歯磨き粉を買うときにフッ素の濃度をよく調べたほうがいい。1000ppm未満の濃度の歯磨き粉には予防効果が弱い」という――。(第3回)

※本稿は、前田一義『歯を磨いてもむし歯は防げない』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。

■歯ブラシに乗せる歯磨き粉は「2センチ」を目安に

スウェーデンWHO(世界保健機関)による調査で、数十年にわたり、むし歯や歯周病が世界的に少ない国であることが証明されている「歯科予防先進国」です。スウェーデンの考え方は、「治療」ではなく「予防」に力を入れるというものです。

治療なら完全に歯医者の領域ですが、予防なら個人でもできます。正しい予防法を知り、実践すれば、誰でも自分自身の歯を守ることができます。スウェーデンでは歯科予防として、4つの柱を打ち立てています。それは以下のとおりです。

①プラーク(歯垢)を取り除く
②食べ方を変える
③フッ素で歯を強化する
④歯の定期検診を受ける

本稿では4つの柱の3つ目である「フッ素で歯を強化する」について解説していきます。

フッ素で歯を強化する」は、基本的に歯磨きを通じて行います。イエテボリ大学で考案された「イエテボリ法」と呼ばれる歯磨き法で、フッ素の力をより効果的に引き出せます。イエテボリ法は、「2+2+2+2テクニック」とも呼ばれます。歯磨きするうえで守りたい、4つの「2」から成るからです。イエテボリ法は以下のように行います。

①フッ素入りの歯磨き粉を歯ブラシに「2センチ」ほど盛りつける。

日本人からすると、2センチは多すぎると感じるかもしれませんが、むし歯予防にはこれくらいたっぷりのフッ素が必要です。たっぷりの歯磨き粉を使うことで、フッ素を口の中に十分行き渡らせることができるのです。ただし、使う歯磨き粉のフッ素濃度が1500ppm程度であることが重要です。

■歯磨きは2分以内、2時間以内の飲食はNG

②フッ素入りの歯磨き粉で「2分間」、口腔内のブラッシングを行う。

このとき、フッ素を口の中に広く行き渡らせるよう意識します。そして磨き終えたらペットボトルのキャップ1杯、10㏄程度の水を口に含み、フッ素を口の中に行き渡らせます。30秒ほど口の中をゆすいだら、水と歯磨き粉を吐き出します。

もっとも、スウェーデン人の多くは、水でゆすがず、口の中の歯磨き粉を吐き出すだけで終わります。歯磨き粉が口腔内に残っても気にならない人なら、このほうがむし歯予防効果があります。

③歯磨き後、「2時間」は飲食やうがいをしない。

フッ素を2時間ほど口の中にとどめておくことで、フッ素が歯に定着するからです。それよりも早く飲食などをすると、せっかくのフッ素効果が薄れてしまいます。

④磨く回数は、1日「2回」。

磨く時間は、朝食後と就寝前です。逆にいえば、食後は必ず磨かなければいけないわけではありません。フッ素のむし歯予防効果を期待するなら、1日2回磨くだけで十分なのです(むし歯リスクの高い人は3回)。もちろん、毎食後に磨きたいなら、それでもかまいません。1日1回では、効果が薄いということです。

つまり、1日「2回」、「2センチ」ほど盛りつけたフッ素入り歯磨き粉で、「2分間」磨いたのち、「2時間」は飲食やうがいをしない。たった、これだけでいいのです。

■フッ素濃度が1000ppm以下のものは効果が期待できない

フッ素にむし歯予防効果があるのは、一つはフッ素に「再石灰化」を促す性質があるからです。

むし歯菌が出す酸で歯のエナメル質からカルシウムやリンが溶けだすことで、むし歯は進行を始めます。食事をすることで口の中のpHが5.5以下になると、歯は脱灰を始め、その後、唾液の力で再石灰化を始めます。フッ素は、この再石灰化を補う力があるのです。

加えて、フッ素には歯のエナメル質をむし歯菌の酸に溶けにくくする力もあります。むし歯菌の働きを弱める力もあります。さまざまな点から、フッ素はむし歯を予防するうえで効果的なのです。

むし歯予防に極めて高い効果を発揮するフッ素ですが、効果を十分に発揮するには濃度が1500ppm程度の歯磨き粉を使う必要があります。ところが、日本ではつい最近まで、効果の低い1000ppm以下の歯磨き粉しか販売が認められていませんでした。これは「フッ素は体に悪い」と危険視する声が、かつての日本に根強くあったからです。

■死亡事故により必要以上に危険視されてしまった

フッ素が日本で危険視されだすのは、1980年代にある歯医者フッ化水素酸を患者の歯に塗布して、死亡させた事件があったことが大きいと思われます。

フッ化水素酸はフッ素化合物の一種で、入れ歯や歯のかぶせ物を加工するときなどに使います。ただし、これは毒物でもあり、直接人間に使うことはありません。事件を起こした歯医者はフッ化ナトリウムフッ化水素酸を間違え、誤ってフッ化水素酸を患者の歯に塗ってしまったのです。

この不幸な出来事により、歯磨き粉のフッ素濃度の世界標準が1500ppmになっても、日本では1000ppm時代が長く続いたのです。確かにフッ化水素酸(フッ酸)は危険ですが、むし歯予防に使うフッ化ナトリウムは、まったく害がありません。そもそも日本人がよく口にするお茶や海藻には、多くのフッ素が含まれています。ビールにもフッ素が含まれています。

これらは体に害があるどころか、お茶も海藻も毎日摂ることで、むしろ健康が促進されます。さらにいえば、水道水にあえてフッ素を入れている国もあります。アイルランドやアメリカの一部などです。これらの国はフッ素がむし歯予防に役立つことから、誰でもその恩恵を受けられるよう、水道水に入れているのです。

あるいはスイスで売られている塩にも、フッ素入りのものがあります。これもまた、むし歯予防のためのようです。

■子どもであってもフッ素濃度が高いものを使うべき

お子さんの歯を守るために、フッ素入りの歯みがき粉を使っているご家庭も多いことでしょう。ただ、そのフッ素濃度、把握していますか?

WHO(世界保健機関)は、むし歯予防のためにフッ素濃度を「1000~1500ppm」と推奨しています。とくに1000ppm未満のフッ素濃度ではむし歯予防効果が弱いことがわかっています。

しかし日本で販売している子ども用の歯みがき粉は、基本的に1000ppm以下。今まで日本で推奨されてきた、子ども用歯みがき粉のフッ素濃度は「500ppm」と低かったため、むし歯予防効果がとても低いことがわかりました。

国際的なガイドラインに基づき、2023年から日本でも子ども用歯みがき粉の推奨濃度が変更になりました。日本小児歯科学会など4学会は、フッ素濃度1000ppm以上の歯みがき粉の使用を推奨しています。

■6歳以上は大人と同量でOK

たとえ3〜5歳の幼児でも、1000ppmのフッ素濃度が効果的といわれています。ポイントは、年齢に応じた歯みがき粉の“量”です。

年齢別のフッ素使用量
0〜2歳 米粒程度の歯みがき粉を使用
3〜5歳 グリーンピース程度の歯みがき粉を使用
6歳以上 大人と同様に1.5〜2cm程度の歯みがき粉を使用
※詳細は日本小児歯科学会の公式ページをご覧ください:[日本小児歯科学会のフッ化物配合歯磨剤の推奨利用方法]

3〜5歳の幼児は、グリーンピース程度の歯みがき粉を出して使ってください。とくに赤ちゃんや子どもに関しては大量にフッ素を飲み込むのは身体によくありません。6歳以上の子どもの場合は、体格の成長に合わせて使用量を調整し、過剰摂取を防ぐことが重要です。

また、繰り返しになりますが、むし歯予防の効果を上げるためには、フッ素入りで歯を磨いたあとは、うがい(少量の水で1回ならOK)、飲食を控えるのを忘れずに。口の中にフッ素がとどまるようにです。少なくとも30分、できれば2時間が理想的です。フッ素が歯にしみこんで、むし歯に負けない強い歯になります。

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前田 一義(まえだ・かずよし)
歯科医
1976年生まれ。日本歯周病学会認定医。2003年日本歯科大学を卒業。仁愛歯科クリニック副院長を経て、現在、医療法人社団康歯会 理事長、前田歯科医院 院長をつとめる。歯周病治療の第一人者・岡本浩氏、竹内泰子氏に師事。歯科世界最高峰であるスウェーデンのイエテボリ大学をはじめ、海外での研修を定期的に受講して最新の治療法を学び、世界標準の歯科治療に精通している。著書に『歯を磨いてもむし歯は防げない』(青春新書インテリジェンス)がある。

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※写真はイメージです – 写真=iStock.com/zeljkosantrac

(出典 news.nicovideo.jp)

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