【社会】休日に「職場のBBQ」なんて断固拒否…「仕事と私生活は分けたい」Z世代社員に振り回されないためのトリセツ

【社会】休日に「職場のBBQ」なんて断固拒否…「仕事と私生活は分けたい」Z世代社員に振り回されないためのトリセツ

仕事と私生活を分けたいZ世代の特性は、今後の職場のあり方を大きく変えていくでしょう。

20代の若手社員への接し方が分からないと悩んでいる人が多い。ラーニングエッジ代表の清水康一朗さんは「自分とは価値観が異なるZ世代に対処するポイントが『良』と『善』だ。日頃は相手の考え方を尊重しつつ、上司として言うべき時は言うという切り替えが重要だ」という――。

■「先輩と話す機会」として企画したが…

Z世代の部下をもつ上司にとって、自分たちの世代と感覚や考え方が異なることが悩みの種となるケースは多いことでしょう。

どう接すれば信頼関係を築けるのか、彼ら・彼女らがやりがいを感じる環境を整えるにはどうすればよいのか、具体的な解決策を見出せずに苦しんでいませんか。

Z世代と接する際のポイントは、「良」と「善」の使い分けにあります。

私が実際に相談を受けた事例とともに、具体的な接し方について見ていきましょう。

ケース:「仕事と私生活はきっちり分けたい」タイプの部下

大手メーカーT社で働く営業部の田中さん(男性、仮名)は、「仕事と私生活はきっちり分けたい」と主張する部下の矢田さん(女性、仮名)への対応に頭を悩ませていました。

事の発端は、矢田さんが入社して間もない春先のことです。

田中さんは、営業部に配属された新入社員が先輩とコミュニケーションを図ってほしいと考え、社休日にオフィス近くの河川敷でバーベキューを催すことにしました。

■「参加しないとダメなんでしょうか?」

営業部に配属された新入社員は3名。

田中さんから部員にメールで開催日時を伝えると、新入社員のうち2名からはすぐに「ぜひ参加させていただきます」と返信がありました。

ところが、矢田さんからは一向に返事が届きません。

どうしたのだろう? と感じた田中さんは、その日の終業時に矢田さんに声をかけました。

「矢田さん、さっきのメール見てくれた?」
「はい、拝見しました」
「来週末だけど、都合はどうかな?」

田中さんにとっては何気ない会話でしたが、矢田さんの表情がみるみる曇り始めたことに気がつきました。

「あの、参加しないとダメなんでしょうか?」
「いやいや、ダメってことはないよ、その日は都合が良くないかい?」
「都合がつくかどうかを、今お伝えしないといけませんか?」

想定していなかった返答を聞いて、田中さんは内心戸惑っていました。

矢田さんの口調に反抗的な印象はなく、なぜ自分の都合を上司に伝えなくてはいけないのか本当にわからない、といった様子です。

■仕事よりプライベートの時間が大切

この翌週、田中さんは矢田さんとの1on1を設定しました。矢田さんがどのような考えで一連の発言をしたのか、真意を知りたかったからです。

1on1の席についた矢田さんは、特に悪びれる様子もなく淡々と話し始めました。

矢田さんは次のように考えていたのです。

・会社は仕事をするための場所で、友達を作るための場所ではない
・休日まで勤務先の方々と一緒に過ごす必要はないと思う
・仕事と私生活にはきちんと線引きをしておきたい
・休日や業務時間外のイベント等には、今後も参加するつもりはない

良かれと思って企画したバーベキューだっただけに、田中さんは面食らってしまいました。

矢田さんのように、仕事と私生活は明確に区別したいという考えの若手社員は少なくないようです。

Z世代の社員は、次のような価値観を大切にしている傾向があります。

・仕事第一ではなく、プライベートの時間を大切にしたい
・自分の時間を大切にしながら働けるかどうかが重要
・仕事と私生活は明確に区別して、私生活に影響が及ばないようにしたい

田中さんが企画した「休日にバーベキュー」は、矢田さんにとってまさしく「私生活を犠牲にしなくてはならない」提案だったのです。

■上司世代とZ世代を隔てる「壁」

一定以上の年齢層にとって、矢田さんのような考え方は受け入れがたいものかもしれません。なぜなら、社会人として経験を積んできた世代は、無意識のうちに次のように考えてしまうからです。

・若手のうちは、仕事で苦労するのはある程度仕方がないことだ
・仕事に慣れるまでは、私生活が多少犠牲になってもやむを得ない
・職場に馴染むためには、業務外でのコミュニケーションも必要だ

仕事と私生活の考え方が、Z世代とは大きく異なっていることにお気づきでしょうか。

「ワークライフバランス」という言葉に代表されるように、マネージャー世代は仕事と私生活を両立させる発想であるのに対して、Z世代にとって仕事と私生活はあくまでも別物です。

こうした根本的な感覚の違いが、Z世代の部下をもつ上司が感じる「モヤモヤ」の根底にあると考えられます。

■モヤモヤを解消する鍵は「良」と「善」

自分とは価値観が異なるZ世代の部下に対処する鍵を握るのが、「良」と「善」の使い分けです。

良:相手を幸せにすること
善:相手を成長させること

基本的に、「相手の価値観を受け入れる」「共感を示す」といったことは、いずれも「良」に含まれます。上司と部下という関係以前に、社員は同じ組織に属するメンバーです。立場の違いこそあれ、日頃は「良」で接していくのが得策でしょう。

矢田さんのケースでは、「仕事と私生活を明確に分ける」という考え方を受け入れることは「良」に当たります。矢田さんにとって、自身の理想が現実のものとなり、幸せな社会人生活を送れるでしょう。

一方で、長い目で見た場合にこの環境が必ずしも矢田さんの「成長」につながるとは限りません。

先輩社員や上司と業務時間内しか接する機会がなければ、相互理解が促されない可能性があります。同じことを報告・連絡・相談しているようでも、信頼関係が築かれている社員とそうでない社員では、伝わり方に大きく差が開くことも考えられるでしょう。

結果として、矢田さんは「自分のことを理解してもらえない職場」「力が発揮できない会社」と捉えてしまい、退職を考え始めるきっかけになることもあり得ます。

■時には、上司としての責務を果たす

こうした中長期的な影響について伝え、理解を促し、周囲とコミュニケーションを深めていく重要性を説くことは「善」に当たります。

「良」に徹することは一見すると部下を思いやっているようで、実は相手の将来や今後のキャリアについて冷淡なのかもしれません。部下が着実に成長し、主体的に仕事に取り組めるようになるためにも、上司は「善」で接する場面を意識的に作るべきでしょう。

先の例では、バーベキューを催す意義や目的が矢田さんにしっかりと伝わっていない可能性があります。業務を離れた時間に垣間見える同僚や先輩の顔が人柄を知るきっかけになることも、経験しなければわからないことです。

上司である田中さんには、日頃の「良」を意図的に「善」へと切り替え、矢田さんがより成長できるように助言する責務があります。

もしかしたら、矢田さんは「なぜ上司にそのようなことを言われなくてはいけないのか」と反感を抱くかもしれません。言葉を尽くして丁寧に説明し、今後の成長に期待していることを伝えることが重要です。

■「指示待ち社員」にはまず説明を

「善」の対応をした際には、最後に「良」で終わるよう心がけることも大切なポイントといえます。

部下について上司が抱える悩みのパターン別に、「善」で対応し「良」で終わる対処の例を紹介します。

■話しかけても手ごたえがない時は…

このように、上司としての助言(=善の対応)をしたのち、部下の価値観や考え方を改めて認め、理解を示す(=良の対応)ことを心がけていくとよいでしょう。

■誰に対してもブレない「自分基準」

Z世代の部下への接し方について、上司が悩んだり苦しんだりする1つの要因は、相手が基準になっていることです。

田中さんのように複数の部下を抱えるマネージャーであれば、相手によって返ってくる反応はまちまちでしょう。

上司自身が苦しまないための接し方のコツは、「自分の中での基準」を定めておくことです。

具体的には、「良」と「善」の比率を決め、自分の中でバランスを取っていくことをおすすめします。例えば「良:善」を「9:1」と決めておくことで、日頃は9割方「良」で接するという基準を意識しやすくなります。

見方を変えると、いざという時には「善」を発動させる、という心構えにもなるはずです。たとえ「善」の接し方をしても、最後には「良」で終わることを意識していれば、お互いに感情的なもつれが生じにくくなります。

想定していなかった部下の言動に振り回されないよう、自分の中での「軸」を決めてみてはいかがでしょうか。

■「決め付け」や「レッテル貼り」にも要注意

今回のコラムでは、上司自身が苦しまないためのZ世代への接し方を紹介してきました。

事例として紹介した矢田さんのような若手社員は、これからも現れる可能性があります。

一方で、「Z世代だから」「若手だから」と一括りにして捉える思考に囚われることのないように注意してください。

Z世代と一口に言っても、人によって考え方や価値観はさまざまです。中には「善」の意図をくみ取り、成長を促してくれる上司に感謝する若手社員もいるでしょう。

世代の違いを意識するあまり、「決め付け」や「レッテル貼り」にならないよう十分留意する必要があります。

「良」と「善」の使い分けは、Z世代の部下に限らず、また上司と部下という関係性に限らず、ビジネスパーソンにとって重要な指針の1つとなるはずです。

「良」と「善」の考え方を、ぜひご自身の職場やビジネスで活かしてください。

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清水 康一朗(しみず・こういちろう)
ラーニングエッジ代表
1974年生まれ、静岡県浜松市出身。98年慶應義塾大学工学部卒業後、人材業界のベンチャー企業に入社。2000年、デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。2003年にラーニングエッジ株式会社を設立。コンサルで学んだマーケティングや顧客管理のノウハウをベースに、業界最大のポータルサイト「セミナーズ」を立ち上げ、教育の流通に努めている。著書に『絆徳経営のすゝめ』(フローラル出版)、『勝手に売れていく人の秘密』(ダイヤモンド社)、『耳から学ぶ勉強法』(サンマーク出版)など。

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※写真はイメージです – 写真=iStock.com/torwai

(出典 news.nicovideo.jp)

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