【社会】認知症を引き起こす”第3の糖尿病”の怖さ…専門医が「老けたくなかったら血糖値を下げて」という理由
【社会】認知症を引き起こす”第3の糖尿病”の怖さ…専門医が「老けたくなかったら血糖値を下げて」という理由
※本稿は矢野宏行『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「効果的に血糖値を下げる方法」を研究し、気づいたこと
私は、大学を卒業後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究に専念しました。今はクリニックを運営し臨床に携わっています。
「どうやったら血糖値が下がるのか」
「最も効果的に血糖値を下げる方法は何か」
研究・臨床の両方向から血糖値のことばかり考えてきました。
最近では、24時間の血糖値の変化を調べる機器を使って、数多くの患者さんのデータを集めています。
その結果、「血糖ブースター」をオンにすると、血糖値の上昇を促すことがわかりました。
つまり、患者さんは知らないうちに血糖ブースターをオンにしていた可能性が高いのです。
血糖値を下げるために運動や食事制限を頑張っているつもりでも、血糖ブースターのスイッチがオンになっているから、血糖値が下がらないのです。
ところで、「血糖ブースターって何?」と思ったのではないでしょうか。
ここで簡単に説明しましょう。
人間の体は、ブドウ糖(グルコース)を分解して、生きるために必要なエネルギーを作っています。食事をするとブドウ糖は「血糖」という形で血液中に蓄えられます。
血液中の血糖は、増えすぎると筋肉や脂肪などにも蓄えられるようになり、その量が多いと、いわゆる肥満になります。
■日ごろ「血糖ブースター」のスイッチをONにしていないか
血糖はつねにエネルギーを作るために消費されるので、血液中の血糖は時間がたつとなくなります。血液中に血糖がなくなったときに、筋肉や脂肪から血糖が取り出されます。
これを「糖新生」といいます。
血糖ブースターのスイッチがオンになっていると、糖新生が起きて、血液中が血糖だらけになります。
これが「高血糖」の状態で、血糖値が高くなっています。この状態が続くと、やがて糖尿病になってしまいます。
ちょうどいい血糖値をキープするために、さらにいえば、糖尿病にならないようにするために必要なことがあります。
血糖ブースターのスイッチをちゃんとオフにすること。
ところが、あなたが毎日よかれと思って続けている習慣が、逆に血糖ブースターをオンにしてしまっているかもしれないのです。
あなたの糖尿病の危険度を調べてみましょう。
次のチェックリストをやってみてください。ひとつでも該当したら要注意です!
■「1型糖尿病は遺伝」という誤解、高齢者が1型になることもある
1型糖尿病と2型糖尿病の治療法の違いを理解できていても、原因について誤解している人は大勢います。とくに1型に関しては、おそらく正確に理解できている人のほうが少ないのではないでしょうか。
多く見受けられるのが、「両親から遺伝する病気」と「生まれつき症状のある先天性の病気」の2点です。
仮に両親が1型糖尿病だとしても、発症率は3~5%程度といわれています。遺伝はしません。
むしろ、食事や生活習慣などの影響を大きく受ける2型のほうが、同じ環境で育つために関連性は圧倒的に高く、両親ともに2型糖尿病の場合、将来的に半数ほどの人が発症するという報告もあります。
また、1型は小児の患者も散見されることから、先天性の病気と思われがちですが、それも違います。生まれつき、というわけではありません。後天性の病気です。
■1型糖尿病は一生インスリン治療が必要となるやっかいな病
お年寄りが1型を発症することもありますし、2型糖尿病の人が途中から1型になる、というレアケースもあります。
1型糖尿病は、進行のペースに個人差はあるものの、発症するとインスリンが分泌されにくくなり、最終的にはほとんど出ない状態になります。一生、インスリン治療が必要となる、とてもやっかいな病気です。
はっきりとした原因は不明ながら、1型糖尿病になったばかりの患者さんを調べると、数週間前に風邪のような症状になっているケースが多いので、ウイルスによる可能性が高いと指摘されています。体内に侵入したウイルスが、インスリンの分泌源である膵臓(すいぞう)のβ細胞を破壊するというのが、最も有力な説です。
世界的に見ると、日本人は1型の少ない民族なのですが、もちろん安心はできません。血糖値のコントロールだけでは防げない糖尿病もあるということを、覚えておきましょう。
1型、2型を問わず、治療をおろそかにしている場合や、治療をしても残念ながら効果があまり認められない場合は、当然ながら高血糖が続き、糖尿病の症状はどんどん悪化していきます。
そうなると、怖いのは合併症です。①神経障害、②網膜症、③腎臓障害が「三大合併症」と呼ばれ、それぞれ症状が進むと、①は足(指)の壊疽(切断)、②は失明、③は人工透析という、たいへん恐ろしい結末を迎えることになります。
それ以外に、脳梗塞や心筋梗塞に直結することもよく知られています。
■意外と知られていない糖尿病→認知症の負の連鎖
そして最近は、糖尿病と認知症の関係性がとりわけ注目されています。認知症を発症する人の大半を占めるタイプの「アルツハイマー型」と「脳血管性型」の両方が、糖尿病が原因で起こるケースもあるといわれているのです。
アルツハイマー型は、アミロイドβという脳内で作られるたんぱく質がゴミとして溜まっていき、しだいに正常な神経細胞が侵されて物忘れが激しくなるのが特徴です。このアミロイドβは、IDEというインスリン分解酵素によって分解されます。
しかし、高血糖状態にある糖尿病患者は、IDEがインスリンの分解に使われることによって不足し、アミロイドβにまで手が回らない状況になってしまうのです。これはすなわち、アルツハイマー型認知症が進行する要因になります。
脳血管性型は、脳の細い血管の詰まりが物忘れにつながるのですが、こちらも高血糖がもたらす動脈硬化にダイレクトにリンクします。脳血管性型認知症の悪化とは無関係ではありません。
この認知症をともなう糖尿病のことを、現在では「3型糖尿病」に分類するようになっています。糖尿病が悪くなると、認知症になることもある――この事実をぜひ知っておきましょう。
■老けて見えるのは…高血糖は白髪・薄毛・しみ・しわの原因
血糖値スパイクは、血糖値が高くなりすぎる状態と、低くなりすぎる状態を、両方つくります。どちらも、いいことはありません。
高血糖のデメリットのうち、世間の関心が非常に高いテーマに言及していきましょう。
俗に「美容と健康」はワンセットで扱われることが多いですが、じつは高血糖は健康だけでなく美容にも大きく影響します。もちろん、みなさんにとって好ましくない方向に、です。
高血糖が続くと、体の中でたんぱく質と糖質が結合し、体温で熱せられることによって「糖化」という現象が起こります。
糖化が起こると、多くのAGEsが発生します。AGEsはAdvanced Glycation End Products の略称で、日本語では「終末糖化産物」と表現されます。
これはいわば、たんぱく質と糖質が加熱されることによって生じる、おこげのようなものです。まさにおこげのように、褐色の姿をしています。
このAGEsは、蓄積した場所の老化をまねく、とても迷惑な物質です。
例えば頭皮にAGEsが溜まると、毛根細胞に作用して、白髪や薄毛の進行を早める原因になります。溜まる場所が顔や体の皮膚であれば、皮膚のコラーゲンの弾性化が低下し、しみやしわがどんどん増えていくことになります。
そう、高血糖が続くとAGEsが増大し、驚くべきペースで老けていってしまうのです。
もちろん、美容だけではなく健康に与える影響も大きく、AGEsが骨に溜まれば変形性関節症や骨粗しょう症、血管に溜まれば動脈硬化や心筋梗塞、脳に溜まれば脳梗塞や認知症などにつながります。
AGEsを増やさないためには、血糖値を下げること、ならびに血糖値スパイクを起こさないことが大切。これを肝に銘じましょう。
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糖尿病専門医
やのメディカルクリニック勝どき院長。医学博士。1981年生まれ。2006年に日本医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。その後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究をする。2023年、やのメディカルクリニック勝どきを開院。「Dr.ゆきなり」としてYouTubeでも情報発信をしている。著書に『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)、『自分でできる! 薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)がある。
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