【社会】入学式の記念写真、SNS投稿で「犯罪」に巻き込まれる? ストーカーや性犯罪から我が子を守るために知っておきたいポイント
【社会】入学式の記念写真、SNS投稿で「犯罪」に巻き込まれる? ストーカーや性犯罪から我が子を守るために知っておきたいポイント
「娘が中学校に入学しました!」「◯◯ちゃん、小学校入学おめでとう!」
4月の入学式シーズン、SNSにお子さんの晴れ姿の写真を投稿する人が多くみられました。しかし、投稿の中には、写真からお子さんの顔や制服、学校名、名前などがわかってしまうケースも少なくありません。
そうした投稿には「お子さんの顔写真は載せないほうがいいのでは」「学校名は隠してあげてほしい」といった心配のコメントが寄せられることが多いです。
実は、入学式の投稿写真は犯罪に悪用されたり、思わぬサイトに転載されたり、さまざまな危険性があります。どのようなリスクがあるのでしょうか。松本典子弁護士に聞きました。
●デジタル誘拐やディープフェイク…これだけある危険
——お子さんの顔や名前、制服、学校名などがわかるような写真を投稿すると、お子さんにどのような危険があるのでしょうか。
お子さんの顔や名前、制服、学校名などがわかるような写真を投稿した場合、お子さんに対する不審者のつきまとい、ストーカー、誘拐のような危険や犯罪に巻き込まれる可能性があります。
お子さんの写真をわが子の写真と偽って自分のSNS上に投稿する「デジタル誘拐」などに悪用される可能性もあります。ポルノサイトに無断転載されたり、小児性愛者の間で情報共有されたりといった危険もあります。
またAI技術が身近になったことにより、ディープフェイクに悪用されるなどの可能性もあります。SNSから取得した画像をAIによって加工し、児童ポルノのような画像を生成する事例も報告されています。
●SNSへの投稿で気をつけたいことは?
——写真や投稿文に学校名を書いていなくても、制服で調べられたり、保護者のアカウントから住んでいる地域がわかり、芋づる式の子どもの行動範囲が知られてしまったりすることもあるかと思います。SNSの利用で何に気をつけたらよいのでしょうか。
SNSを利用する際には、以下のような点に気をつけると良いと思います。
・公開範囲を知っている人に制限する
・写真を公開する場合、写真にお子さんを特定する情報が映らないように注意する
・写真に地域が特定できるお店の商品・ロゴ等が映り込まないように注意する
・投稿文に地域が特定できる場所や天気を書かないようにする
・写真撮影の際に、デジタルカメラやスマートフォンの位置情報をOFFにする
・撮影した写真のExif情報(デジタル写真を撮影した際に作成される撮影日時、撮影場所、カメラの設定等のデータ)を編集・削除する
・構図を工夫したり、編集・加工するなど映り込みに注意する
・SNS投稿時に位置情報を付けないようにする
・写真の内容次第ですが、日時場所を特定されないためにリアルタイムでの投稿を避けた方が良い場合もあります
その場の勢いで投稿するのではなく、投稿してもよい投稿文や写真か、再度見直してから投稿するのも大事だと思います。
●低年齢の子どもの同意をとることは難しい
——こうした投稿は、子どもにとって、肖像権やプライバシー権の侵害にはあたらないのでしょうか。
親が子どもの写真をSNSに投稿することは、親が自由に判断してよいわけではありません。子どもにも人権があり、肖像権やプライバシー権が認められます。
本人の同意がある場合には、肖像権やプライバシー権の侵害にはならないのが原則ですが、子どもの場合には、低年齢であればあるほど、SNSに写真を投稿することの意味を正確に理解して同意することは難しい場合が多いと思います。
そのため、無断で子どもの写真をSNSに投稿することは、子どもの肖像権やプライバシー権の侵害にあたると考えられます。
そして、一度SNSに投稿された写真は、デジタルタトゥーとして、将来にわたって残り続ける可能性もあります。お子さんが将来、写真を削除したいと思っても、完全に削除することは難しいかもしれません。
犯罪に巻き込まれるリスクだけでなく、お子さんのためにも、SNSへの投稿は慎重にすべきでしょう。
【取材協力弁護士】
松本 典子(まつもと・のりこ)弁護士
歌舞伎町でキャバクラ嬢として働いているときに弁護士を志す。国際基督教大学教養学部理学科生物学専攻卒業。予備試験経由で司法試験合格。東京弁護士会所属。企業法務を中心に、男女問題、相続、刑事事件等幅広く取り扱う。現在はテーマパーク業界を中心とした横断的な法律問題や個人情報保護に注力している。
事務所名:松本中央法律事務所
事務所URL:https://www.m-laws.jp/
